M&Aとは?売り手株主が知っておきたい基礎知識をわかりやすく解説

M&Aは、大企業だけが行うものではありません。現在では、後継者不在への対応や事業承継、会社の成長、経営者の引退など、中小企業にとっても重要な経営の選択肢となっています。
本記事では、中小企業の経営者に向けて、M&Aの意味や目的、代表的な手法、メリット・デメリット、企業価値評価(バリュエーション)、M&Aの流れ、費用、相談先など、M&Aを検討するうえで知っておきたい基礎知識を解説します。
M&Aとは
M&Aの意味
M&Aとは、「Mergers and Acquisitions(合併と買収)」の略で、企業の合併や買収の総称です。
従来の日本の中小企業におけるM&Aは、主に経営者の高齢化や親族・社内の後継者不在に伴う「黒字廃業を防ぐための守りの手段(事業承継)」として活用されてきました。
しかし現代において、M&Aの持つ意味は大きく進化しています。
米中対立をはじめとする地政学的リスクの高まりを受けたグローバルなサプライチェーン再編、日本企業の生産拠点等の国内回帰、海外企業による対日投資の増加、そして国の政策支援が集中する「戦略17分野」への成長投資といった巨大なマクロ経済の追い風が吹いています。
こうした環境下において、現代のM&Aは単なる後継者問題の穴埋め(守り)にとどまらず、「大手グループの資本力・販売網・技術力を活用し、グループの総合力によって自社の成長を飛躍的に加速させる攻めの成長戦略」として再定義されています。
日本のM&Aは過去最多|2025年の動向
2025年の日本企業が関わるM&Aは 5,115件 となり、2年連続で過去最多を更新しました。取引金額も 35.7兆円と過去最高を記録しています。
背景には、後継者不在への対応(事業承継)に加える形で、地政学的リスクや国内投資拡大の波をとらえた「グループ傘下入りによる成長加速」や「選択と集中」など、M&Aを活用する目的が多角化・高度化している状況があります。
M&Aのメリット・デメリット
売り手のメリット・デメリット
売り手にとってM&Aは、会社や事業を次の担い手につなぎ、譲渡対価を得る機会となります。一方で、様々な負担やリスクも発生するため、慎重に検討する必要があります。
メリット
- 【攻め】大手グループ傘下入りによる「経営基盤の強化・成長加速」
- 買い手の豊富な資金力、先進技術、ノウハウ、既存の販売網や設備を活用し、自社単独では不可能なスピードと規模感で事業を成長させることができます。
- 【守り】後継者問題の解決と事業・雇用の継続
- 親族や社内に後継者がいない場合でも、買い手に事業を引き継ぐことで黒字廃業を防ぎ、会社を存続させることができます。
- 従業員の雇用や長年培った技術・ノウハウを安定して保護・維持できます。
- 創業者利益の獲得・投下資本の回収(イグジット)
- 株式や事業の譲渡対価として現金を確定獲得でき、創業者利益としての報いを得ることができます。
- 獲得した資金は引退後の生活資金や次の新事業投資へと活用可能です。
- 経営者保証(個人保証)・担保からの解放
- 金融機関への事前相談や買い手との契約条件調整を通じて、融資に伴う経営者個人の連帯保証や担保提供を解除・引き継がせることができ、財務的・精神的リスクから解放されます。
- 事業の「選択と集中」および事業再生
- ノンコア部門や赤字事業を切り離して主力事業にリソースを集中(選択と集中)させることや、買収側の支援を受けて迅速な経営再建を図ることができます。
デメリット・注意点
- 希望条件で売却できないリスク:希望する価格や条件で売却できない場合や、買い手が見つからない場合がある
- 時間と実務の負担:成約・譲渡実行までに長期間を要する場合があり、本業と並行して行う資料準備やデューデリジェンスへの対応が、時間的・精神的な負担となる可能性がある
- 従業員の不満や離職:経営方針や企業文化、処遇などの変化により、従業員が不満を抱き、離職につながる可能性がある
- 取引先との関係の変化:買い手による経営方針や取引条件の変更により、取引先との関係に影響が出る可能性がある
- 情報漏洩による影響:交渉中に譲渡の検討や機密情報が外部に漏れると、従業員や取引先の不安や信用の低下につながる可能性がある
買い手のメリット・デメリット
買い手にとってM&Aは、会社や事業を譲り受け、事業の拡大や新たな分野への参入を図る機会となります。一方で、様々な負担やリスクも発生するため、慎重に検討する必要があります。
メリット
- 時間の短縮:自社だけでは実現までに長い時間を要する事業拡大や新規参入を、M&Aによって短期間で実現できる
- 既存事業の拡大:買収によって事業規模や営業エリア、市場シェアを拡大できる
- 事業の多角化:新たな事業分野へ参入し、事業ポートフォリオを多様化できる
- 節税:買収対象企業に繰越欠損金がある場合、スキームによっては、自社の利益と相殺できる
デメリット・注意点
- 粉飾や簿外債務などの発覚:買収前に把握できなかった粉飾や簿外債務などが買収後に発覚し、損失が生じる可能性がある
- シナジー効果の未実現:買収後の統合がうまく進まず、期待していた売上拡大やコスト削減などの効果が得られない可能性がある
- 投資回収の長期化・困難化:買収価格が高すぎると、買収後に十分な利益を生み出せず、投資を回収できない可能性がある
- 従業員の不満や離職:経営方針や企業文化、処遇などの変化により、従業員が不満を抱き、離職につながる可能性がある
- 許認可の承継ができない可能性:M&Aの手法や許認可の種類によっては許認可を承継できず、買収後の事業継続に支障が生じる可能性がある
M&Aの手法・スキーム
M&Aにはさまざまな手法があり、選ぶ方法によって、売り手の手取り額や税負担、買い手が引き継ぐ対象が異なります。中小企業のM&Aでは、株式譲渡と事業譲渡が代表的です。以下では、それぞれの仕組みを説明します。

株式譲渡
株式譲渡とは、対象会社の株主が、保有する株式を買い手に譲渡する方法です。M&Aでは、買い手が経営権を取得するために用いられます。会社自体は存続するため、従業員との雇用関係や取引先との契約、資産・負債は、原則として対象会社にそのまま残ります。
事業譲渡
事業譲渡とは、対象会社が営む事業の全部または一部を買い手に譲渡する方法です。譲渡する資産や負債、契約などを個別に定めるため、特定の事業だけを引き継ぐことができます。従業員との雇用関係や取引先との契約は自動的には引き継がれず、個別に同意を得るなどの手続きが必要です。
その他の手法・スキーム
| 手法 | 概要 |
|---|---|
合併 | 複数の会社を1つの会社に統合する方法です。既存の会社が他の会社を引き継ぐ「吸収合併」と、新しく設立する会社が各社を引き継ぐ「新設合併」があります。 |
会社分割 | 事業に関する権利義務の全部または一部を、別の会社に引き継ぐ方法です。既存の会社に引き継ぐ「吸収分割」と、新しく設立する会社に引き継ぐ「新設分割」があります。 |
株式交換 | ある会社の発行済株式の全部を別の会社が取得し、完全親子会社の関係をつくる方法です。対象会社の株主には、対価として親会社の株式などが交付されます。 |
株式移転 | 1社または複数の会社が、発行済株式の全部を新しく設立する会社に取得させる方法です。持株会社を設立する場合などに用いられます。 |
第三者 割当増資 | 特定の第三者に新たな株式を引き受けてもらい、会社が資金を調達する方法です。資本提携や、出資比率に応じた経営権の取得などに活用されます。 |
M&Aの基本的な流れ
M&Aは、検討・準備から相手探し、条件交渉、デューデリジェンス(DD)、最終契約、クロージング、PMIまで、複数のステップを経て進みます。全体の流れを把握しておくことで、各段階で何を準備すべきかを整理しやすくなります。

- M&Aの検討・準備
- 専門家への相談
- 企業価値評価
- 相手探し
- 条件交渉・基本合意
- デューデリジェンス
- 最終契約の締結・クロージング
- PMI
1. M&Aの検討・準備
まず、M&Aで何を実現したいのかを明確にし、希望条件を整理します。
売り手は、譲渡する範囲や希望価格、従業員の雇用、経営者の引退時期、経営者保証の扱いなどを検討します。買い手は、取得したい事業や人材・技術、買収予算、期待するシナジーなどを整理します。
2. 専門家への相談
M&A仲介会社やFA、税理士・公認会計士、弁護士などに相談し、進め方や必要な準備を確認します。
専門家によって支援する範囲や立場、報酬体系が異なるため、自社の目的に合う相談先を選ぶことが大切です。M&Aを実行するか決めていない段階でも、相談を通じて選択肢を整理できます。
3. 企業価値評価
対象会社の収益力や資産・負債、将来性などをもとに価値を評価し、譲渡価格を検討するための目安をつかみます。
売り手は希望価格を考える材料とし、買い手は買収価格の妥当性や投資の回収可能性を検討します。評価額がそのまま譲渡価格になるわけではなく、実際の価格は交渉を通じて決まります。
4. 相手探し
売り手は事業を引き継ぐ買い手候補を探し、買い手は自社の戦略に合う会社や事業を検討します。
会社を特定できる情報の開示に先立って秘密保持契約を結ぶなど、情報管理に配慮しながら資料の確認や経営者同士の面談を進めます。価格だけでなく、事業の相性や経営方針も確認します。
5. 条件交渉・基本合意
譲渡価格や対象範囲、支払方法、従業員の処遇、経営者の引継ぎ期間などを話し合います。あらかじめ、優先する条件と調整できる条件を整理しておくと、交渉を進めやすくなります。
主な条件について認識がそろった段階で、基本合意書にまとめることがあります。その後の調査や交渉を通じて、最終条件を詰めていきます。
6. デューデリジェンス
買い手が対象会社の税務・法務・労務・事業などを調査し、買収判断に必要な情報を確認します。簿外債務や契約上の制約など、事業運営や価格に影響するリスクも調べます。
売り手や対象会社は、資料の提出や質問への回答に対応します。調査結果によっては、譲渡価格や契約条件を見直す場合があります。
7. 最終契約の締結・クロージング
調査結果を踏まえて条件を調整し、合意した譲渡価格や支払方法、当事者の義務などを最終契約で定めます。
その後、必要な手続きや条件を満たしたうえで、株式・事業の移転と対価の支払いなどを行います。この取引の実行を「クロージング」といいます。契約の締結とクロージングは、別の日に行う場合もあります。
8. PMI
M&A成立後は、経営方針の共有や役割分担の整理、業務・システム・人事制度の調整などを進めます。
すべてを一度に統一するのではなく、対象会社の強みや企業文化を踏まえ、優先順位を付けて取り組むことが大切です。従業員や取引先への説明も含め、成立前から準備することで、円滑な引継ぎとシナジーの実現を目指します。
企業価値評価
非上場会社には市場で取引される株価がないため、収益力や保有資産、類似企業の評価などをもとに価値を算定します。評価額は、売り手と買い手が譲渡価格を検討する際の判断材料になります。以下では、企業価値評価の代表的な3つのアプローチを紹介します。
企業価値を評価する3つのアプローチ
| アプローチ | 評価の考え方 | 代表的な手法 | 評価額を左右する主な要素 |
|---|---|---|---|
インカム アプローチ | 将来の収益力から評価 | DCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法) | 事業計画、将来キャッシュフロー、割引率、成長率 |
マーケット アプローチ | 類似企業や類似取引と比較 | 類似会社比較法、類似取引比較法 | 比較対象、評価倍率、市場環境 |
コスト アプローチ | 資産と負債をもとに評価 | 時価純資産法 | 資産・負債の時価、含み損益、不良資産、簿外債務 |
中小企業M&Aの企業価値評価で用いられる年買法
中小企業M&Aでは、年買法と呼ばれる簡便的な評価方法が用いられることがあります。一般的には、時価純資産に一定年数分の利益をのれんとして加えて株式価値を算定します。
株式価値評価 = 時価純資産 + 修正後利益 × 評価年数
年買法は時価純資産を基礎とするため、コストアプローチの一種として扱われることがあります。一方で、利益をのれんとして加算するため、収益力も部分的に反映する方法です。
評価額を左右する主な要素:
- 資産と負債の時価
- どの営業利益を基準にするか
- 一時的な収益や費用をどう修正するか
- 何年分の利益を加算するか
- 簿外債務や不良資産をどう反映するか
利益の定義や評価年数に統一された基準はないため、算定条件によって評価額が変わる点にも注意が必要です。
評価額と実際の譲渡価格は必ずしも一致しない
企業価値評価によって算定された評価額は、価格交渉の判断材料であり、実際の譲渡価格を自動的に決めるものではありません。買い手候補間の競争や、買い手が期待するシナジー、対価の支払時期・方法などによって、合意する価格は変わります。
また、デューデリジェンスで新たな債務や事業上の課題などが判明した場合は、評価額や契約条件を見直すこともあります。評価額はあくまで目安と捉え、価格だけでなく取引条件全体を踏まえて検討することが大切です。
M&Aをサポートする専門家
M&Aでは、相手先の探索、企業価値評価、条件交渉、デューデリジェンス、契約手続きなど、専門的な判断が必要になる場面があります。相談先には、M&A仲介会社やFA、弁護士、公認会計士・税理士、金融機関、公的支援機関などがあります。
どの専門家に相談するかは、M&A全体の進め方を相談したいのか、法務・税務・財務など特定分野を確認したいのかによって異なります。目的や検討段階に応じて、必要な支援内容を整理しておくことが重要です。
M&Aアドバイザー
M&Aアドバイザーは、M&Aの検討段階から相手先の探索、条件交渉、クロージングまでを支援する専門家です。主に、売り手・買い手の間に立って支援するM&A仲介会社と、売り手または買い手のいずれか一方に助言するFAに分けられます。

M&A仲介会社
M&A仲介会社は、売り手・買い手双方の間に立ち、候補先の探索、マッチング、条件調整、契約成立までの一連のプロセスを支援します。双方の意向を調整しながら進めるため、特に中堅・中小企業のM&Aで利用されることが多い相談先です。
ただし、仲介会社によって支援範囲や報酬体系は異なります。相談前に、どの段階まで支援を受けられるのか、担当体制や費用の発生タイミングを確認しておくことが重要です。
FA(ファイナンシャル・アドバイザー)
FA(ファイナンシャル・アドバイザー)は、売り手または買い手のいずれか一方の立場で、M&A戦略、候補先の選定、条件交渉、契約実務などを支援する専門家です。
依頼者側の利益を重視した助言を受けやすい一方、相手方との調整は別途必要になります。上場企業同士のM&Aや大型案件など、利害関係者が多い場面で起用されることがあります。
その他の各分野の専門家・機関
M&Aでは、仲介会社やFAに加え、弁護士、税理士・公認会計士、金融機関、公的支援機関などが、それぞれの専門分野で支援します。相手探しや交渉を含む全体の進行を相談したいのか、契約や税務など特定の課題を確認したいのかを整理し、目的に合った相談先を選びましょう。
支援範囲や対応内容は専門家・機関によって異なるため、目的に合う相談先かを確認することが大切です。
| 相談先 | 特徴 | 留意点 |
|---|---|---|
税理士・公認会計士 | 財務・税務の視点で相談でき、顧問であれば自社の状況も共有しやすい | M&Aの経験や対応できる業務は事務所によって異なる |
M&Aマッチングプラットフォーム | インターネットを通じて、幅広く相手候補を探せる | 交渉・契約の支援範囲や、情報の公開範囲を確認する |
事業承継・引継ぎ支援センター | 事業承継について相談できる公的窓口 | 相談後の支援の進め方や、専門家との連携体制を確認する |
商工団体 | 地域の身近な窓口として、事業承継の相談や支援制度の案内を受けられる | 相手探しや交渉にどこまで対応するかを確認する |
金融機関 | 取引関係を生かした相談や、候補先の紹介、買収資金の調達を相談できる | 候補先を探す範囲や、支援内容・手数料を確認する |
M&Aにかかる手数料・費用
契約前から成約・譲渡実行までの段階では、M&A仲介会社やFAなどのM&Aアドバイザーに支払う費用が発生します。中小M&Aガイドライン(第3版)では、支援機関に対し、手数料の算定基準や発生時期などを依頼者へ説明するよう求めています。料金体系は依頼先によって異なるため、内容を踏まえて検討することが大切です。
M&A仲介会社やFAに支払う主な費用は、以下のとおりです。すべての費用が発生するわけではなく、料金体系や支払時期は依頼先によって異なります。
| 費用の種類 | 支払うタイミングと算定方法 |
|---|---|
着手金 | 支援契約の締結時や業務開始時などに支払う費用。金額は依頼先によって異なり、設定しない会社もあります。 |
中間金 | 基本合意時など、一定の段階に進んだ際に支払う費用。設定しない会社もありますが、成功報酬の一部として設定される場合や、成功報酬とは別に設定される場合があります。 |
成功報酬 | クロージング時など、契約で定めた時点で支払う費用。レーマン方式などで計算され、最低報酬が設定される場合があります。 |
月額報酬 | 支援を受ける期間中、毎月支払う費用。業務内容などに応じて設定され、発生しない会社もあります。 |
その他の専門家費用
デューデリジェンスを実施する際に、弁護士、公認会計士、税理士などの専門家や調査機関に支払う費用です。調査範囲、依頼する専門家、M&Aの規模によって異なります。
M&Aで発生する税金
M&Aでは、採用する手法や売り手・買い手の立場によって、税務上の取り扱いが異なります。株式譲渡、事業譲渡、合併など、どのスキームを選ぶかによって、課税対象や確認すべき税目が変わります。
特に、売り手では譲渡後の手取り額、買い手では取得する資産や買収後の会計・税務処理に影響するため、M&Aの検討段階から税務上の論点を確認しておくことが重要です。
売り手に発生する税金
M&Aにかかる税金は、株式譲渡や事業譲渡などの手法と、売り手が個人か法人かによって異なります。譲渡価格がそのまま手元に残るわけではないため、税金や手数料を差し引いた手取り額を事前に確認することが大切です。
| 手法・受取人など | 主な税務上の取り扱い |
|---|---|
株式譲渡・個人株主 | 株式の譲渡価格から取得費や譲渡にかかった費用などを差し引いた譲渡益に対して、原則として所得税・復興特別所得税・住民税がかかります。 |
株式譲渡・法人株主 | 株式の譲渡益が売り手である法人の所得計算に含まれ、他の損益と合わせて法人税等が計算されます。 |
事業譲渡・法人 | 事業の譲渡益が会社の所得計算に含まれ、他の損益と合わせて法人税等が計算されます。譲渡する資産の種類などに応じて、消費税の確認も必要です。 |
役員退職金・退任する経営者など | 原則として退職所得として課税され、退職所得控除などが適用されます。役員としての勤続年数や支給額などによって取り扱いが異なり、支給する会社で損金に算入できる範囲も確認が必要です。 |
買い手に発生する税金
買い手にかかる税金は、M&Aの手法や取得する資産によって異なります。特に、事業譲渡で資産を直接取得する場合は、買収価格に加えて、消費税や不動産取得税、登録免許税などの負担を確認する必要があります。
株式譲渡では、株式の取得対価に消費税はかかりません。また、対象会社が保有する不動産の所有者は変わらないため、株式の取得だけで、その不動産の取得税や所有権移転登記に伴う登録免許税が発生するわけではありません。
買収後についても、のれんの会計・税務上の処理、繰越欠損金の利用制限、役員退職金の取り扱いなどを確認することが大切です。具体的な負担額は、税理士などの専門家に確認しましょう。
| 税金の種類 | 主な税務上の取り扱い |
|---|---|
消費税 | 事業譲渡では、建物・設備・棚卸資産・営業権などの課税資産に対する対価に消費税がかかります。土地などの非課税資産とは区分して確認します。 |
不動産取得税 | 事業譲渡などで土地や建物を取得する場合に、原則として課税されます。取得する不動産の評価額や、軽減措置の適用などを確認します。 |
登録免許税 | 取得した不動産の所有権移転登記などを行う際にかかります。必要な登記の種類に応じて、税額や手続きを確認します。 |
M&Aを成功させるためのポイント
M&Aでは、契約の成立だけでなく、事業の継続や成長など、当初の目的を実現することが大切です。そのために、相手選び、リスクの確認、専門家との連携を意識して準備を進めましょう。
目的に合う相手を選ぶ
売り手と買い手の目的は、必ずしも同じではありません。大切なのは、双方の希望や方針を確認し、両立できる相手を選ぶことです。
たとえば、売り手が従業員の雇用維持を重視する場合は、買い手の人材活用や事業運営の方針を確認します。価格だけで判断せず、引継ぎ後の経営方針や事業の相性も踏まえて検討しましょう。
リスクを把握し、対応を決める
財務や契約上の問題に加え、従業員の退職や企業文化の違いなど、M&Aにはさまざまなリスクがあります。
買い手はデューデリジェンスを通じて対象会社の実態を確認し、判明した課題を価格や契約条件、買収後の運営計画に反映します。売り手も、自社の課題や開示する情報を事前に整理し、説明できるよう準備することが重要です。
必要な専門家と連携する
相手探しや条件交渉、企業価値評価、契約・税務の確認では、それぞれに専門知識が必要になります。M&A仲介会社やFA、弁護士、税理士・公認会計士など、課題に応じた専門家と連携しましょう。
依頼する際は、支援範囲や実績、報酬に加え、誰の立場で助言するのかも確認します。専門家の助言を受けながら、経営者自身が目的や優先順位を明確にし、判断することが大切です。
M&Aについてよくある質問
M&Aにはどのくらいの期間がかかりますか?
専門家に正式に依頼してから成約まで、半年〜1年程度が目安です。ただし、相手探しや条件交渉に時間がかかり、1年以上を要する場合もあります。事前準備や成立後の引継ぎにも時間が必要なため、希望する引退時期などから余裕をもって検討しましょう。
赤字会社でもM&Aはできますか?
赤字でも、買い手が事業に価値を見いだせば、譲渡できる可能性があります。技術や人材、顧客基盤などの強みに加え、赤字の原因や改善の見込みが判断材料になります。赤字という理由だけで諦めず、事業の実態を整理して相談しましょう。
小さな会社でも売却できますか?
小規模な会社でも譲渡できる可能性があります。買い手は売上や従業員数だけでなく、地域の顧客との関係や独自の技術、事業との相性なども評価します。ただし、案件の規模によって対応する支援機関や費用が異なるため、自社に合う相談先を選ぶことが大切です。
借入金があっても会社を売却できますか?
借入金があっても譲渡は可能です。株式譲渡では、借入金は原則として対象会社に残り、返済能力や借入条件などが買い手の判断に影響します。経営者保証は自動的には解除されないため、成立前に金融機関などと扱いを確認する必要があります。参考:中小企業庁
従業員にはいつM&Aについて伝えますか?
一律の時期はなく、M&Aの手法や従業員の役割、必要な手続きに応じて決めます。調査に協力する担当者などには、守秘を求めたうえで先に伝える場合もあります。事業譲渡では雇用の引継ぎに本人の同意が必要になるため、必要な説明や手続きから逆算して準備します。
取引先にはいつ伝えますか?
契約上の通知・承諾の要否や、取引への影響を踏まえて決めます。事前の承諾が必要な場合は、M&Aの実行前に対応します。買い手や専門家と説明の順序を相談し、取引の継続方針や窓口の変更などを伝えることが大切です。
会社を売却すると社長はどうなりますか?
売却後に退任する場合もあれば、社長や役員として経営を続ける場合もあります。一定期間、顧問などとして引継ぎを支援することもあり、売却すればすぐに引退できるとは限りません。役割や報酬、関与する期間を買い手と事前に話し合っておきましょう。
M&Aを検討していることが外部に漏れることはありませんか?
情報漏洩のリスクを完全になくすことはできません。候補先との秘密保持契約や、開示する情報・相手の制限などによってリスクを抑えます。社名を伏せた資料でも事業内容から会社が推測される場合があるため、資料の記載内容にも注意が必要です。
M&Aを検討し始めたら、まず何をすればよいですか?
まず、M&Aを考える理由と、引継ぎ後も大切にしたい条件を整理しましょう。希望時期や従業員の雇用、自身の引退など、優先順位を考えることが出発点です。決算書などの基本資料を用意して専門家に相談すれば、M&Aを実行するか決めていない段階でも、選択肢や準備すべきことを確認できます。
まとめ|M&Aは中小企業にとって重要な経営戦略の一つ
M&Aは、会社を売却するためだけの手段ではありません。
後継者問題への対応、事業のさらなる成長、経営資源の選択と集中など、中小企業経営におけるさまざまな課題を解決する選択肢の一つです。
また、M&Aは相手探しを始める前の準備によって、その後の選択肢や交渉結果が大きく変わります。
実際にM&Aを行うか決めていない段階でも、自社にどのような選択肢があるのかを整理しておくことが重要です。
M&A・事業承継の支援ならトラストベース
トラストベースでは、M&Aや事業承継を検討している中小企業経営者からのご相談を受け付けています。M&Aを行うか決めていない段階でも、目的や希望条件、今後の選択肢を整理できます。
M&Aに関する基礎知識
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