【売り手向け】M&Aの相談先は?失敗しない選び方と注意点を解説

自社のM&A(株式譲渡や事業譲渡)を検討し始めた際、「まず誰に相談すべきか分からない」とお悩みの経営者様も多いのではないでしょうか。
本記事では、初回相談前に売り手が準備すべき資料・情報や売却目的の整理項目から、主な相談先6種類の特徴をまとめた比較表、目的別の選び方、失敗しない注意点まで分かりやすく解説します。
M&Aの初回相談前に売り手が準備しておくべき5つの資料・情報と整理項目
初回相談前に揃えておきたい5つの資料・情報
初回面談でより具体的なアドバイスを受けるため、事前に以下の資料や情報を整理しておくとヒアリングがスムーズになります。
ただし、すべての資料が初回から完璧に揃っていなくても相談を受け付けている窓口も多いため、まずは手元にある情報から準備を進めるとよいでしょう。
- 直近3期分程度の決算書:自社の財務状況や売上・利益の推移を客観的に確認するための基本資料です。なお、相談先の判断や検討の進捗に応じて、税務申告書等の追加提出を求められる場合があります。
- 会社概要・事業説明資料:主要事業の内容、売上構成比、顧客層、自社の強みや許認可などの事業実態を伝える資料です(既存の会社案内等で構いません)。
- 株主名簿と資本構成の概要:誰がどれだけの株式を保有しているかなど、権利関係や集約状況を確認するための情報です。
- 従業員・組織の概要:正社員・パートなどの人数、平均年齢、主要な役職者の構成、後継者の有無などの組織骨格を把握するための情報です。
- 売却理由・売却後の希望を整理したメモ:検討に至った背景、希望条件、譲渡後の自身の関わり方の意向をまとめたメモです。
売却目的の明確化:「守りの課題解決」と「攻めの成長戦略」
売却目的を明確にすることで、交渉方針や適切な相談先の選定がスムーズになります。売却目的は大きく「守り」と「攻め」に分類できます。
- 「守り」の課題解決型M&A
- 後継者不在の解消・廃業回避:親族や社内に後継者がいない場合でも、第三者へ事業を引き継ぐことで会社を存続させます。
- 従業員の雇用継続・技術の承継:会社や事業を存続させることで、長年培った技術やノウハウを守り、従業員の雇用を維持します。
- 経営者保証(個人保証)の解除・整理:金融機関からの借入れに対する経営者個人の保証責任について、M&Aに伴う解除や調整を目指します。
- 「攻め」の成長戦略型M&A
- 大手・中堅グループ入りによる成長加速:買い手の持つ資本力、販売網、ブランド力を活用し、自社単独では難しかった事業拡大をスピーディーに実現します。
- 株式売却による資金化(イグジット):保有株式を譲渡することで、株式価値を現金化します。
- 事業の「選択と集中」:ノンコア事業を譲渡し、得られた経営資源や資金を主力事業へ集中させます。
M&Aの実行によって自動的に解除されるわけではありません。金融機関等の債権者との調整が必要となるため、手続の時期や条件を初期段階から適切に確認しておくことが重要です。
譲れない条件と優先順位の整理
- 希望条件の洗い出し:希望する譲渡価格の範囲、従業員の雇用条件の維持、取引先との関係維持、売却時期など、譲れない条件を整理します。
- 条件の優先順位付け:すべての希望を満たすことが難しい場合もあるため、「絶対に譲れない条件」と「相手や状況に応じて柔軟に対応できる条件」に分類し、明確な判断軸を作ります。
M&Aを相談できる主な専門家・機関の特徴と比較
【売り手向け】M&Aの相談先 比較一覧表
売り手が相談先を選ぶ際は、立場・サポート形態・ネットワーク・費用体系の違いを把握することが大切です。
| 相談先タイプ | 立ち位置・サポート形態 | 売り手側の主な特徴・メリット | 売り手側の留意点 | 向いている売り手 |
|---|---|---|---|---|
| M&A仲介会社 | 売り手・買い手の間に立ち、M&A成立に向けた調整を支援 | ・豊富な買い手データベースで候補先を探索可能 ・相手探しから契約・手続まで一括支援 |
・双方の間に入り調整を行うため、売り手単独の希望がすべて通るとは限らない ・事業者により着手金や中間金等が発生 |
手間を抑えて相手探しから条件調整・手続まで一括で任せたい方 |
| FA | 売り手のみと契約し、売り手の立場で助言・交渉 | ・売り手の意向に沿った条件交渉や助言に集中 ・複雑なスキームや構造への助言 |
・買い手との条件調整に時間を要する場合がある ・費用体系や対応案件規模は事業者により異なる |
売り手専属のアドバイザーとして条件検討や交渉の助言を受けたい方 |
| 金融機関 | 取引ネットワークを活用した買い手候補の紹介・助言 | ・自社の財務状況を把握しており初期相談がしやすい ・企業ネットワークを保有 |
金融機関や案件規模によって対応範囲や手数料体系(最低手数料等)が異なる | 普段から付き合いのある取引銀行や地域信用金庫にまず相談したい方 |
| 税理士・公認会計士・弁護士 | 財務・税務検討、株価助言、法務リスク管理・契約書作成 | ・顧問士業なら自社を熟知しており相談しやすい ・法務・税務の専門課題への対応やセルサイドDD支援 |
・買い手候補のマッチングが得意とは限らない ・支援範囲が個別専門領域に限定されやすい |
顧問税理士や弁護士に法務・税務面のアドバイスを受けながら進めたい方 |
| 公的支援機関 | 国や地域の中小企業・事業承継支援窓口 | ・無料で相談できる ・公的窓口として客観的な相談・助言を受けやすい |
支援内容や対応範囲は案件や地域等によって異なる | まずは無料で相談したい小規模事業者や個人事業主の方 |
| M&Aプラットフォーム | Web上で売り手・買い手のマッチングを行うサービス | ・料金体系によっては費用を抑えられる ・自分のペースで幅広い候補先を探索できる |
専門家支援の有無や料金体系、サポート範囲はサービスにより異なる | 費用を抑えつつ、自分で買い手候補を探して進めたい方 |
M&A仲介会社
- 特徴・役割:売り手と買い手の間に立ち、M&A成立に向けた全体の進行調整や契約手続きを一括して支援する事業者です。
- 売り手のメリット:独自のデータベースやネットワークを有しており、自社単独では出会えない候補先を探すことができます。初期相談から企業概要書の作成支援、交渉調整、最終契約手続きまでワンストップでサポートを受けられます。
- 留意点:売り手・買い手双方の間に立ち合意形成を目指す形態であるため、必ずしも売り手側単独の希望条件のみが最優先されるとは限りません。また、着手金、中間金、成功報酬などの発生タイミングや料金体系は会社ごとに異なるため事前確認が必要です。
FA(ファイナンシャル・アドバイザー)
- 特徴・役割:売り手(依頼主)のみと契約を締結し、売り手の立場で譲渡価格や契約条件等について助言・交渉を行う専門家です。
- 売り手のメリット:売り手専属の立場から助言を受けられるため、自社の意向に沿った交渉戦略やスキームの検討が可能です。
- 留意点:買い手との条件調整に時間を要する場合があります。また、費用体系や対応可能な案件規模は事業者によって大きく異なるため、自社のニーズに合うか確認が必要です。
金融機関
- 特徴・役割:取引先のネットワークを活用して買い手候補を紹介するほか、M&Aや事業承継全般の相談に対応します。
- 売り手のメリット:普段から付き合いのある取引金融機関であれば、自社の財務状況や経営課題を理解しているため初期相談がスムーズです。
- 留意点:金融機関ごとに対応している案件規模やサポート範囲が異なります。最低手数料(ミニマムフィー)が設定されている場合もあるため、案件規模に合致しているか確認が必要です。
税理士・公認会計士・弁護士
- 特徴・役割:財務・税務・法務などの高度な専門知識を活用し、個別の専門手続きやアドバイスを支援します。
- 税理士・公認会計士:株価・企業価値に関する助言、税務上の検討、財務資料の整理、必要に応じたセルサイドDD(売り手側での事前調査)などを支援します。
- 弁護士:基本合意書や最終契約書の作成、リーガルチェック、法務リスクの助言を担当します。
- 売り手のメリット:自社の内情を知る顧問税理士等であれば気軽に相談でき、法的なリスク管理や税務面の考慮漏れを防ぐことができます。
- 留意点:相手先探し(マッチング)ノウハウや案件全般の進行管理に対応していない事務所もあるため、必要に応じて他の専門家と連携して進める必要があります。
公的支援機関(事業承継・引継ぎ支援センター・商工会議所など)
- 特徴・役割:国や自治体が設置する公的窓口で、中小企業・小規模事業者の事業承継やM&Aに関する相談・助言を行います。
- 売り手のメリット:無料で相談でき、公的窓口として公平なアドバイスが得られます。小規模案件や個人事業主の相談にも幅広く対応しています。
- 留意点:具体的な支援内容や対応範囲は地域や案件の状況によって異なるため、自社の求めるサポートが得られるか事前に確認するとよいでしょう。
M&Aプラットフォーム
- 特徴・役割:Web上で売り手が自社情報を登録し、買い手候補を探索・マッチングできるサービスです。
- 売り手のメリット:料金体系によっては費用を抑えられることがあり、時間や場所を選ばず自分のペースで広範な買い手候補を探すことができます。
- 留意点:すべてのプラットフォームが当事者同士の直接交渉のみで完結するわけではありません。アドバイザーによる伴走支援が用意されているサービスもあれば、交渉や契約を自社主体で進める必要があるサービスもあるため、専門家支援の有無や料金体系・サポート範囲を事前によく確認することが大切です。
結局、売り手はどこに相談すればいい?目的別の相談先選定
相談先ごとに強みや役割が異なるため、「どの相談先が一番良いか」という絶対的な答えはありません。売り手自身の課題や目的に応じて適切な相談先を選択することが重要です。
目的別・相談先候補の比較一覧表
| 売り手の目的・希望 | 主な相談先候補 | 理由・選定のポイント |
|---|---|---|
| まず何から始めるべきか相談したい | 公的支援機関(事業承継・引継ぎ支援センター等)、顧問税理士 | 自社の課題整理や基本的な進め方を相談しやすいため。 |
| 幅広く買い手候補を探し、手続きを一括で任せたい | M&A仲介会社 | 候補先探索から交渉調整・契約手続まで一括して支援を受けられるため。 |
| 売り手の立場に特化して条件交渉や助言をしてほしい | FA(ファイナンシャル・アドバイザー) | 売り手専属の立場から、譲渡条件やスキームについて助言を受けられるため。 |
| 税務や法務のリスクチェック・資料整理を中心に進めたい | 士業(税理士・公認会計士・弁護士) | 企業価値に関する助言、契約書作成、法務・税務面のリスク管理など専門的な支援を受けられるため。 |
| 費用を抑えて自分のペースで買い手を探したい | M&Aプラットフォーム | サービスの料金体系によっては費用を抑えながら、Web上で候補先を探せるため。 |
| 事業融資や取引関係を含めて相談したい | 取引金融機関(銀行・信用金庫など) | 自社の財務や事業状況を日常的に把握している場合があり、資金面や事業承継について相談しやすいため。 |
複数の専門家を組み合わせる選択肢
M&Aを進めるにあたり、相談先を1社だけに限定する必要はありません。例えばM&A仲介会社と買い手候補を探しつつ、企業価値評価の確認は自社の顧問税理士に確認するといったように、複数の専門家を組み合わせて進めるケースも一般的です。
売り手がM&Aの相談先を選ぶ6つのポイント
1. 相談したい内容に対応しているか
- 支援範囲の確認: 買い手候補の探索、企業価値に関する助言、条件交渉、契約手続きなど、自社が必要とする支援に対応しているかを確認します。
- 支援体制の確認: どの段階まで支援を受けられるのか、必要に応じて税理士・公認会計士・弁護士などの専門家と連携できるかを確認します。
2. 売り手支援の実績や専門性があるか
- 売り手支援の実績: 成約件数だけでなく、売り手側のM&A支援実績があるかを確認します。
- 業界・案件規模への専門性: 自社と同じ業界や類似する業界、自社と同程度の企業規模の案件を支援した実績があるかを確認します。
3. 誰が担当するかを確認する
- 担当者の経験: 会社全体の実績だけでなく、実際に担当するアドバイザーのM&A支援経験や、自社の業界への理解を確認します。
- 担当体制の確認: 初回相談の担当者と契約後の担当者が同じか、買い手候補の探索、条件交渉、契約など、それぞれの段階を誰が担当するのかを確認します。
- 説明力や相性の確認: 専門用語を分かりやすく説明してくれるか、リスクや不利になり得る条件も説明してくれるか、継続して相談しやすい担当者かを確認します。
4. 自社に合った買い手候補を探せるか
- 候補先探索の方法: 自社の事業内容や譲渡目的、希望条件に合った買い手候補を探せるかを確認します。
- ネットワークの確認: どのような買い手データベースや企業ネットワークを活用して候補先を探索するのかを確認します。
- 情報開示の方法: 買い手候補へ自社名などを開示する際、どの段階で売り手の同意を得るのかなど、情報開示のルールも確認します。
5. 支援範囲と報酬・契約条件が明確か
- 費用の確認: 着手金、中間金、月額報酬、成功報酬など、どの段階でどのような費用が発生するのかを確認します。
- 成功報酬の算定基準: レーマン方式を採用している場合は、何を基準額として成功報酬を計算するのか、最低報酬額が設定されているかなどを確認します。
- 契約条件の確認: 他のM&A支援機関への依頼を制限する専任条項や、契約終了後の成約について報酬が発生する場合があるテール条項について、契約期間や対象範囲、報酬発生条件を確認します。
6. 利益相反や情報管理への対応を確認する
- 仲介会社の契約関係を確認する: M&A仲介会社は、売り手と買い手の双方を支援する場合があります。その場合は、双方との契約関係や報酬体系について説明を受けます。
- 利益相反に関する説明を確認する: 売り手と買い手の利益が一致しない場面でどのように対応するのか、契約前に十分な説明があるかを確認します。
- 秘密保持・情報管理を確認する: 買い手候補へ自社名や財務情報などを開示する際の同意手続きや、秘密保持契約(NDA)、情報管理の方法について確認します。
まとめ:適切な事前準備と相談先選びで満足のいくM&Aを実現しよう
- 直近3期分程度の決算書をはじめとする基本資料・情報を整理し、「守りの課題解決」か「攻めの成長戦略」かといった自社の売却目的を明確にしておくことが密度の高い相談につながります。
- 主要6種類の相談先(仲介会社、FA、金融機関、士業、公的機関、プラットフォーム)にはそれぞれの役割や特徴があります。目的や自社の状況に合わせて適切なパートナーや組み合わせを選びましょう。
- 秘密保持や情報開示ルール、専任条項・テール条項等をしっかり確認した上で、複数の相談先を比較することが、納得感のあるM&Aを進めるうえで重要です。
M&A・事業承継の支援ならトラストベース
トラストベースでは、M&Aや事業承継を検討している中小企業経営者からのご相談を受け付けています。M&Aを行うか決めていない段階でも、目的や希望条件、今後の選択肢を整理できます。
M&Aでは、どの会社に相談するかだけでなく、実際に誰が担当するかも重要です。トラストベースでは、初回のご相談から相手探し、条件交渉、成約に至るまで、責任を持って対応します。
「まず何から検討すればよいか分からない」という段階でも、お気軽にご相談ください。

