会社分割の手続きと流れ|9段階で解説

会社分割の手続きと流れ|9段階で解説。会社分割の9段階を、契約・計画、関係者への手続き、効力発生・登記の3つに分けて番号付きで示した画像。

会社分割の手続きでは、事前検討に加え、契約・計画の作成、労働者や株主への対応、債権者保護、登記などが必要です。新設分割と吸収分割で効力発生や登記の扱いが異なるため、法定期限から逆算して準備します。

会社分割の手続きの全体像

会社分割は、事業に関する権利義務の全部または一部を、別の会社にまとめて引き継がせる仕組みです。事業を切り出す会社を分割会社、吸収分割で事業を受け取る既存の会社を承継会社、新設分割で設立する会社を新設会社といいます。

会社分割は、主に次の9段階で進めます。

  1. 会社分割の検討とスケジュールの作成
  2. 分割契約の締結・新設分割計画の作成
  3. 事前開示書類の備置き
  4. 労働者との協議と、労働者・労働組合への通知
  5. 株主総会による承認
  6. 株主への通知と株式買取請求への対応
  7. 債権者保護手続き
  8. 会社分割の効力発生と登記
  9. 事後開示書類の備置き

段階1は実務上の準備であり、独立した法定手続きではありません。また、労働者対応や債権者保護などは並行して進めることがあるため、必ずしも上記の順番どおりに進むとは限りません。

新設分割では設立登記の予定日、吸収分割では契約で定める効力発生日を基準に日程を逆算します。株主総会の日程は、事前開示の書類を備え置き始める日や、労働者への通知期限にも影響します。

手続き 主な期限・期間 注意点
事前開示書類の備置き 株主総会の2週間前など、法定の該当日のうち最も早い日から 分割方式・対象会社で基準が異なる
労働者等への書面通知(分割会社) 原則、株主総会の日の2週間前の日の前日までなど 承認不要の場合は別の期限。異議申出まで13日間以上を確保
株主への通知・公告(新設分割) 原則、承認決議から2週間以内 対象株主や例外を確認
株主への通知・公告(吸収分割) 原則、効力発生日の20日前まで 分割会社・承継会社で対象者を確認
債権者保護(対象となる会社) 異議申出期間を1か月以上確保 対象となる債権者を確認
設立・変更登記(新設分割) 会社法所定の日から2週間以内 起算点は段階8で説明
変更登記(吸収分割) 効力発生日から2週間以内 分割会社・承継会社
事後開示書類の備置き 成立日(新設分割)・効力発生日(吸収分割)から6か月間 対象会社と開始時点を確認

表は株式会社の主な期限をまとめたものです。適用条件や例外によって実際の日程は変わり、表の期間を足しても最短の所要期間にはなりません。

(出典:会社法 第782条第2項・第785条・第789条・第791条・第794条第2項・第797条・第799条・第801条・第803条第2項・第806条・第810条・第811条・第923条・第924条、労働契約承継法)

会社分割の手続きの9つの段階

1. 会社分割の検討とスケジュールの作成

まず、分割する目的と対象事業を明らかにし、引き継ぐ資産・負債・契約・従業員の範囲を整理します。新設分割か吸収分割か、いつ実施するかも検討します。

株主総会、労働者との協議・通知、債権者保護、登記に必要な期間を踏まえ、実施スケジュールを作成します。税務、許認可、資金繰りへの影響は弁護士・税理士などに確認します。

2. 分割契約の締結・新設分割計画の作成

次に、引き継ぐ権利義務、対価、当事者となる会社などを、法律で定められた書類にまとめます。新設分割では分割会社が新設分割計画を作成し、吸収分割では分割会社と承継会社が吸収分割契約を締結します。吸収分割では、契約に効力発生日も定めます。

会社分割自体がM&A取引である場合、吸収分割契約が最終契約の役割を果たすこともあります。一方、会社分割とは別に株式譲渡などの取引を行う場合は、その取引の契約と、会社法上の分割契約・計画を分けて準備します。

(出典:会社法 第362条第4項・第757条・第758条・第762条・第763条)

3. 事前開示書類の備置き

会社分割では、株主や債権者が内容を確認できるよう、分割契約・計画の内容などを記載した書類を本店に備え置きます。これを事前開示といいます。

新設分割では分割会社が、吸収分割では分割会社と承継会社がそれぞれ、この書類を備え置きます。備え置きを始める日は、株主総会の日の2週間前の日、株主への通知・公告の日、債権者への公告・催告の日など、方式・対象会社に応じて該当する日のうち最も早い日です。

事前開示書類は、関係する手続きのうち最も早い日から備え置きます。債権者への公告・催告などを早めに行う場合は、その日までに書類を用意しておく必要があります。

(出典:会社法 第782条第1・2項・第794条第1・2項・第803条第1・2項)

4. 労働者との協議と、労働者・労働組合への通知

会社分割に伴う労働契約の承継には、労働契約承継法(会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律)が適用されます。分割会社は対象となる労働者と事前に個別協議を行い、分割後の勤務先や労働条件などを説明します。そのうえで、対象労働者や、労働協約を締結している労働組合に、法定事項を書面で通知します。

株主総会の承認が必要な場合、通知期限は原則として総会の日の2週間前の日の前日です。承認が不要な場合は、分割契約の締結日または新設分割計画の作成日から起算して2週間を経過する日までとなります。

労働契約が承継されるかどうかは、事業への従事状況と契約・計画の定めによって異なります。

労働者の状況 承継する定めがある 承継する定めがない
承継事業に主として従事する 承継される 期限内に異議を申し出れば承継される
主として従事しない 期限内に異議を申し出れば承継されない 承継されない

異議申出期限は、分割会社が定めます。株主総会の承認が必要な場合は、通知期限日の翌日から総会の前日までの間に設定します。承認が不要な場合は、分割の効力発生日の前日までに設定します。いずれの場合も、通知が労働者に届いた日から少なくとも13日間を確保する必要があります。

労働者・労働組合への書面通知は、期限までに相手方に届いている必要があります。発送した日ではなく届いた日で判断されるため、個別協議を早めに始め、余裕をもって通知してください。

(出典:労働契約承継法、労働契約承継法の指針/厚生労働省)

5. 株主総会による承認

会社分割では、原則として株主総会の特別決議による承認が必要です。新設分割は分割会社の株主総会で承認を受けます。吸収分割では、原則として分割会社と承継会社のそれぞれで承認を受けます。

特別決議は原則として、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成で成立します。定款により定足数などの定めが異なる場合があるため、定款も確認します。一定の要件を満たす簡易分割・略式分割では、承認決議を省略できる場合があります。

(出典:会社法 第309条第2項・第783条・第784条・第795条・第796条・第804条・第805条)

6. 株主への通知と株式買取請求への対応

会社分割に反対する株主には、一定の要件のもとで、会社に株式を公正な価格で買い取るよう請求する権利があります。会社は、対象株主への通知・公告と株式買取請求の期限を確認します。

新設分割では、原則として承認決議から2週間以内に株主へ通知します。吸収分割では、原則として効力発生日の20日前までに通知します。通知は、公告で代えられる場合があります。

株主が買取請求できる期間は、吸収分割では効力発生日の20日前の日から前日まで、新設分割では通知・公告の日から20日以内です。ただし、簡易分割などでは買取請求が認められない場合があります。株主全員が賛成していても、必要な通知・公告の扱いは別途確認してください。

新株予約権を発行している会社では、一定の新株予約権者にも通知や買取請求の手続きが必要になることがあります。

(出典:会社法 第785条・第787条・第797条・第806条・第808条)

7. 債権者保護手続き

会社分割で財産や債務が別の会社に移ると、債権者が不利益を受けるおそれがあります。そのため、異議を申し出ることができる債権者がいる場合は、債権者保護手続きが必要です。会社は官報に公告し、原則として、対象となる債権者のうち会社が把握している相手に個別に知らせます(催告)。異議申出期間は1か月以上確保します。

1か月以上の異議申出期間に加えて、官報公告の手配や個別催告の準備にも時間がかかります。その期間も見込んで、早めに日程を組んでください。

異議を申し出ることができる債権者の範囲は、分割会社と承継会社で異なります。債権者から異議が出た場合、会社は原則として、弁済や担保の提供などの対応が必要です。

吸収分割では、必要な債権者保護手続きが終了していなければ、予定した効力発生日に分割の効力は生じません。

(出典:会社法 第759条第10項・第789条・第799条・第810条)

8. 会社分割の効力発生と登記

会社分割の効力が生じる時点と、商業登記の申請期限は方式によって異なります。対象事業に不動産が含まれる場合は、別途必要な不動産登記と書類も司法書士に確認します。

登記の期限は、新設分割と吸収分割で数え始める日が違います。下の説明で、自社の方式に当たる方を確認してください。

新設分割の場合

新設会社は設立登記によって成立し、その日に新設分割計画の定めに従って権利義務を引き継ぎます。株主総会の決議の日、株主への通知・公告から20日を経過した日、債権者保護手続きが終わった日、分割会社が定めた日など、該当する日のうち最も遅い日から2週間以内に、分割会社の変更登記と新設会社の設立登記を申請します。

吸収分割の場合

承継会社は契約で定めた効力発生日に、吸収分割契約の定めに従って権利義務を引き継ぎます。分割会社と承継会社の変更登記は、その効力発生日から2週間以内に申請します。

(出典:会社法 第49条・第759条・第764条・第923条・第924条第1項第1号)

9. 事後開示書類の備置き

会社分割後は、分割により承継した権利義務などを記載した所定の書類を作成し、本店に備え置きます。新設分割では新設会社の成立日、吸収分割では効力発生日を基準として、対象会社で6か月間の備置きが必要です。書類の作成・備置開始時点や対象会社は方式によって異なります。

また、会計・人事・労務・システムの引継ぎや、許認可に関する対応も必要です。これらは法定の事後開示とは別の作業であり、PMI(M&A後の統合作業)として分割前から準備しておきます。

(出典:会社法 第791条・第801条・第811条、中小PMIガイドライン p.105・110・118/中小企業庁/2022年3月)

簡易分割・略式分割とは

簡易分割で株主総会の決議が不要になる場合

簡易分割は、会社法で定められた規模要件などを満たす場合に、株主総会の承認を省略できる制度です。判定基準は分割会社側と承継会社側で異なります。

吸収分割における主な条件と例外は、次のとおりです。

項目 分割会社側 承継会社側
株主総会の承認を省略できる条件 承継させる資産の帳簿価額の合計額が、分割会社の総資産額の5分の1以下 分割会社に交付する対価の額(会社法の定めに従って計算した額)が、承継会社の純資産額の5分の1以下
例外 例外規定なし
  • ① 承継会社が非公開会社で、対価の全部または一部が自社の譲渡制限株式の場合
  • ② 会社法上の分割差損が生じる場合(承継債務額が承継資産額を超える場合など)
  • ③ 一定数以上の議決権を行使できる株式を持つ株主が、所定の通知・公告の日から2週間以内に反対を通知した場合

①〜③のいずれかに該当する場合は、承継会社の株主総会の承認が必要です。

5分の1の基準は、定款でこれを下回る割合を定めている場合、その割合で判断します。また、新設分割でも、分割会社が承継させる資産の帳簿価額の合計額を基準に、株主総会の承認を省略できる場合があります。

(出典:会社法 第784条第2項・第795条第2項第1・2号・第796条第1項・第796条第2項・第796条第3項・第797条第3・4項・第805条)

略式分割で株主総会の決議が不要になる場合

略式分割は、分割会社と承継会社の一方が他方の特別支配会社である場合に、支配されている側の会社の株主総会の承認を省略できる制度です。特別支配会社とは、原則として相手会社の総株主の議決権の10分の9以上を保有する会社をいいます。

吸収分割における条件と例外は、次のとおりです。

項目 分割会社側 承継会社側
株主総会の承認を省略できる条件 承継会社が分割会社の特別支配会社 分割会社が承継会社の特別支配会社
例外 例外規定なし 承継会社が非公開会社で、対価の全部または一部が承継会社の譲渡制限株式の場合は、株主総会の特別決議が必要

5分の1や10分の9という数字だけで承認不要と判断しないことが重要です。

(出典:会社法 第468条第1項・第784条第1項・第796条第1項)

FAQ

会社分割にはどのくらいの期間がかかりますか?

会社分割の所要期間は、対象事業や株主総会の要否、労働者対応などによって変わります。債権者の異議申出期間は1か月以上必要ですが、それが会社分割全体の最短期間という意味ではありません。事前開示や各通知、登記の準備を含めて日程を組みます。

会社分割では必ず株主総会の決議が必要ですか?

原則として、会社分割には株主総会の特別決議が必要です。ただし、簡易分割や略式分割の要件を満たす場合は省略できることがあります。分割会社と承継会社で要件が異なるため、それぞれ確認が必要です。

会社分割ではすべての債権者に通知が必要ですか?

すべての債権者への個別通知が必須とは限りません。異議を申し出られる債権者の範囲は分割会社と承継会社で異なり、所定の追加公告によって個別催告を省略できる場合もあります。ただし、省略が認められない債権者もいるため、対象を確認します。

会社分割にはどのような費用がかかりますか?

主に官報公告の掲載費用、登記の登録免許税、弁護士・司法書士・税理士などの報酬が考えられます。不動産や許認可に関する手続き費用、税負担が生じる場合もあります。総額は案件の内容によるため、一律の金額では示せません。

まとめ|法定期限を踏まえ、会社分割を早めに準備する

会社分割の手続きでは、事前検討から事後開示までの9段階を押さえることが基本です。特に新設分割と吸収分割では、効力発生と登記の関係が異なります。設立登記の予定日(新設分割)または効力発生日(吸収分割)から逆算し、労働者・株主・債権者への対応を弁護士や司法書士、社会保険労務士などと確認しましょう。