【買い手向け】M&Aのソーシングとは?買収先の探し方とマッチングを成功させるポイント

M&Aのソーシングとは、買い手が買収の目的に合う候補先を探し、アプローチする活動です。本記事では、買収先の探し方と進め方、売り手とのマッチングを成功させるために買い手が準備することを解説します。
M&Aのソーシングとマッチングとは
ソーシングとは買収の候補先を探す活動
ソーシングとは、買い手が、買収の目的に合う候補先を探し、アプローチする活動を指します。条件に合う会社を見つけるだけでなく、その会社や売り手側の窓口に関心を伝え、検討を始めるところまでを含みます。
マッチングとは売り手と買い手が当事者として接触すること
中小M&Aガイドラインでは、マッチングを、売り手と買い手がM&Aの当事者となり得る者として接触することとしています。条件の交渉は、マッチングの後に始まります(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.16/中小企業庁、2024年8月30日公表)。
M&Aの流れでの位置づけ
ソーシングは、「M&Aの流れ」で示した手順のうち、次の図の1〜5(M&Aの目的と条件の整理から、候補先の選定と打診まで)にあたります。その後、6の秘密保持契約の締結と企業概要書の開示、7のトップ面談へと進みます。

買収先を探す4つの方法
買収先の探し方には、主に次の4つがあります。料金体系や支援の範囲が異なるため、自社の状況に合わせて選び、組み合わせて使うこともできます。
| 探し方 | 探せる案件 | 料金体系・確認する費用 | 支援の範囲 | 情報管理で確認すること | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|---|
| M&A専門業者 | 業者が持つ案件情報やネットワークから紹介される案件 |
|
紹介から交渉・契約まで(契約の内容による) | 秘密保持の取り決め・資料の共有範囲 | 交渉や手続きまで支援を受けたい |
| M&Aプラットフォーム | 登録された案件を自社で検索 |
|
主にマッチングまで | 買収ニーズなどの登録情報の公開範囲 | 自社のペースで手軽に探したい |
| 金融機関・公的支援機関 | 機関が持つ取引先の情報やデータベースから紹介される案件 |
|
機関ごとに異なる | 登録情報の共有先・開示範囲 | 身近な機関に相談しながら探したい |
| 自社から声をかける | 取引先や同業者など、自社が知っている会社 |
|
自社で進める(必要に応じて専門家) | 打診する相手・伝える情報・秘密保持の取り決め | 買収したい会社が具体的に決まっている |
1. M&A専門業者に買収ニーズを伝えて紹介を受ける
M&A専門業者(M&A仲介・FA)に、買収の目的と条件(買収ニーズ)を伝え、条件に合う案件の紹介を受ける方法です。M&A専門業者が持つ案件情報やネットワークから紹介を受けられ、マッチングの後も、交渉や手続きの支援を受けられます。
ガイドラインの重要事項説明書サンプルでは、マッチングの段階の業務として、次のような例を挙げています(出典:中小M&Aガイドライン(第3版)参考資料11「M&A仲介契約/FA契約 重要事項説明書サンプル」 p.3/中小企業庁)。
- 依頼者の希望や、M&A後のシナジー(買い手の事業と組み合わせることで生まれる相乗効果)も踏まえて候補先を探索・選定・紹介
- 買い手が売り手に提示する意向表明書の作成支援
一方で、手数料がかかり、紹介を受けられる案件の範囲は業者によって異なります。M&A仲介とFA(フィナンシャル・アドバイザー)の違い、手数料の体系、契約の内容を確かめてから依頼しましょう。詳しくは「M&A仲介とFAの違い」「M&Aの手数料」「アドバイザリー契約」で解説しています。依頼先の選び方は「【買い手向け】M&Aの相談先」をご覧ください。
2. M&Aプラットフォームで案件を探す
M&Aプラットフォームとは、インターネット上で売り手と買い手のマッチングの場を提供するウェブサイトです。買い手も登録して案件を探すことができ、自社のペースで候補先を検討できます(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.18・130/中小企業庁、2024年8月30日公表)。
費用の体系は、プラットフォームによって異なります。成約時に成功報酬がかかるもの、月額料金だけで成功報酬がかからないもの、月額料金と成功報酬を組み合わせたものなどがあります。月額料金、成約時の手数料、最低手数料の有無を、利用するサービスで必ず確認しましょう。
マッチングの後の基本合意や最終契約、条件の交渉は、原則として当事者が自ら行います。M&A専門業者や、弁護士・税理士などの専門家にも依頼する場合は、その手数料・報酬が別にかかります。また、どちらから交渉を始められるか、当事者が直接登録できるかといった仕組みも、プラットフォームによって異なります(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.59/中小企業庁、2024年8月30日公表)。
掲載情報を確かめる際の注意点は、「M&Aプラットフォームの掲載情報は確かめてから進める」で説明します。
3. 金融機関や公的支援機関に相談する
取引のある金融機関や公的支援機関に相談し、候補先の紹介を受ける方法です。身近な相談先から探し始められる点が利点です。
金融機関の中には、融資などの業務に加え、M&Aのマッチング支援を行うところもあります。全国に設置されている事業承継・引継ぎ支援センターは、譲り渡しや譲り受けを希望する事業者の情報などをデータベースにして相手探しを行っています。後継者のいない中小企業と、事業を営んでいない創業希望者をつなぐ「後継者人材バンク」もあります(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.17・60・62/中小企業庁、2024年8月30日公表)。
日本政策金融公庫の「事業承継マッチング支援」は、事業を譲り受けたい人も無料で利用できます。ただし、弁護士などの専門家の支援を受ける場合は、別に費用がかかることがあります。利用できる人の条件は、公式ページで確認しましょう(出典:事業承継マッチング支援(申込登録)/日本政策金融公庫)。
支援の範囲や対象は機関ごとに異なります。紹介の後の交渉や契約まで支援を受けられるか、相談するときに確認しておきましょう。
4. 取引先や同業者に自社から声をかける
取引先や仕入先、同業者など、すでに関係のある会社や条件に合う会社に、自社から打診する方法です。すでに取引などがある相手なら、事業の内容や経営者の人柄をある程度知ったうえで検討できます。探す段階の費用も抑えやすい方法です。
ただし、相手が会社の譲渡を考えているとは限りません。打診の仕方によっては、これまでの関係を損なうおそれもあります。声をかける相手や伝え方を慎重に選び、話が進む場合は、詳しい情報を受け取る前に秘密保持契約を結びましょう。
当事者同士で秘密保持契約を結ぶ場合は、ガイドラインの秘密保持契約書サンプルが参考になります。当事者同士で手続きを進めることに不安がある場合は、弁護士や税理士などの専門家、または事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的機関に相談することが望ましいとされています(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.43/中小企業庁、2024年8月30日公表、中小M&Aガイドライン(第3版)参考資料7「各種契約書等サンプル」 p.9/中小企業庁、2025年12月15日時点版)。
秘密保持契約の内容は「秘密保持契約(NDA)」で解説しています。
買収先探しからトップ面談までの進め方
買収先探しからトップ面談までは、例えば次の順で進みます。探し方によって、順番や担い手は変わります。
- 買収の目的と条件を決める
- 探す方法を選び、候補案件を集める
- 目的と条件に照らして検討し、関心を伝える
- 秘密保持契約を結び、詳しい情報を確認する
- トップ面談で相性と考え方を確かめる
1. 買収の目的と条件を決める
最初に、何のために買収するのかを決めます。そのうえで、業種・地域・規模・予算などの条件と、その優先順位を整理します。目的の考え方は「【買い手向け】M&Aの目的」、条件の整理の仕方は「【買い手向け】M&Aの相談先」で解説しています。
あわせて、「この条件に当てはまる場合は見送る」という基準も決めておきましょう。候補案件を比べるときの判断が速くなります。
2. 探す方法を選び、候補案件を集める
4つの探し方から自社に合うものを選び、候補案件を集めます。M&A専門業者からの紹介、プラットフォームでの検索、金融機関や公的支援機関からの紹介、自社での洗い出しを組み合わせてもかまいません。
自社から候補企業を探す場合は、条件に合う会社を、候補に挙げた理由とともに一覧にし、優先順位を付けて整理する方法があります。
3. 目的と条件に照らして検討し、関心を伝える
集めた候補案件を、手順1で決めた目的と条件に照らして検討します。関心がある案件は、M&A専門業者やプラットフォームを通じて、または自社から、その旨を伝えます。
売り手側のM&A専門業者から紹介される案件では、最初は社名を伏せた資料で概要が示されます。この資料をノンネームシートといい、「ティーザー」とも呼ばれます。概要から関心の有無を判断し、その理由とあわせて伝えましょう。詳しくは「ノンネームシート」をご覧ください。
4. 秘密保持契約を結び、詳しい情報を確認する
関心を伝え、売り手の同意が得られたら、秘密保持契約を結び、企業概要書などの詳しい資料を受け取ります。企業概要書は、売り手の事業内容や財務状況などをまとめた資料です。
受け取った資料で事業内容や財務状況を確認し、買収の目的と条件に合うかを検討します。疑問点を整理し、トップ面談で確認したいことを準備しておきましょう。資料の内容と確認の観点は「企業概要書(IM)」で解説しています。
5. トップ面談で相性と考え方を確かめる
売り手と買い手の経営者同士が会い、経営の考え方や、従業員・取引先への向き合い方を確かめます。条件だけでは分からない相性を知るための場です。詳しくは「トップ面談」をご覧ください。
トップ面談の後、買い手は条件を示した書面を出し、売り手と基本合意を結ぶ段階へ進みます。この段階は「意向表明書(LOI)」と「基本合意書(MOU)」で解説しています。
マッチングを成功させる5つのポイント
1. 買収の目的と条件を具体的に伝え、必要に応じて見直す
M&A専門業者やプラットフォームには、買収の目的と条件をできるだけ具体的に伝えましょう。条件があいまいなままでは、紹介される案件が絞られず、検討に時間がかかります。
条件は、一度決めたら変えないものではありません。検討を進める中で分かったこと(価格の水準や、条件に合う案件の数など)を踏まえて見直し、見直した内容は依頼先にも伝えましょう。
2. 紹介や打診には早く、誠実に返答する
紹介された案件や、自社から声をかけた相手の反応には、早めに返答しましょう。売り手は複数の候補先を比べていることがあり、返答が遅れると、ほかの候補先との話が先に進むことがあります。
見送る場合も、理由を添えて伝えると、依頼先が自社の考えを理解しやすくなり、次に紹介される案件が条件に合いやすくなります。関心の有無と理由を、早めに、率直に伝えることが信頼につながります。
3. 価格だけでなく、売り手が大切にしていることを理解する
売り手は、譲渡価格だけでなく、従業員の雇用、取引先との関係、社名や拠点、会社の将来などを考えて相手を選ぶことが多くあります。従業員の処遇や経営の進め方など、買収後の方針をトップ面談などで具体的に伝えられるよう準備しましょう。
経営の考え方や大切にしていることが合うかは、条件を比べるだけでは分かりません。経営者同士の対話で確かめましょう。また、買収後の統合を見据え、従業員や取引先との関係をどう引き継ぐかを早い段階から考えておくことも大切です。買収後の統合については「PMI」で解説しています。
4. 買い手として調査されることに備える
ガイドラインでは、M&A専門業者(M&Aプラットフォームの運営者を含む)に、買い手が最終契約を守り、事業を引き継ぐ意思と能力を持っているかを確かめるための調査が求められています。調査の内容として想定されているのは、主に次の3つです。
- 財務状況:買収の代金を用意できるか、買収後も事業を続けて運営できるか
- コンプライアンス:反社会的勢力に当たらないか、過去にM&Aに関するトラブルを起こしていないか
- 事業実態:実際に事業を営んでいるか
調査は、買い手がM&A専門業者と契約を結ぶ前(プラットフォームの場合は登録の前)に加え、M&Aの進み具合に応じて行い、最終契約の締結までに十分に確かめることとされています(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.100〜101/中小企業庁、2024年8月30日公表)。
決算書や税務申告書、登記簿などをすぐに示せるよう準備し、買収資金の目処も付けておきましょう。準備が整っていると、売り手からの信頼を得やすくなります。
5. 社内で検討する体制と判断の期限を決める
誰が案件を検討し、誰が最終的に判断するのかを、探し始める前に決めておきましょう。どの段階で税理士や弁護士などの専門家に相談するかも決めておくと、検討が滞りにくくなります。
判断に時間がかかると、売り手がほかの候補先との検討を先に進めることがあります。案件ごとに、いつまでに判断するかの目安も決めておきましょう。
買い手が注意すること
手数料と支援の範囲を確認する
依頼先によって、手数料の体系と、マッチングの後のどこまでを支援するかが異なります。プラットフォームでマッチングした後に、M&A専門業者や、弁護士・税理士などの専門家に依頼する場合は、その手数料・報酬が別にかかります(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.59/中小企業庁、2024年8月30日公表)。
依頼する前に、どの段階でいくら手数料が発生するか、どこまで支援を受けられるかを確認しましょう。手数料の詳細は「M&Aの手数料」、契約の内容は「アドバイザリー契約」で解説しています。
売り手の意向に反する優先紹介や、不当な条件誘導に応じない
ガイドラインでは、M&A仲介が、買い手から追加で手数料を受け取り、その見返りに便宜を図ることを、行ってはならない行為としています。例えば、売り手の意向に反して特定の買い手を優先してマッチングすることや、不当に低い譲渡価格へ誘導することです。リピーターとなる依頼者を優遇し、同じような便宜を図ることも、行ってはならないとされています(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.99/中小企業庁、2024年8月30日公表)。
ガイドラインの重要事項説明書サンプルでは、こうした追加の手数料は、本来は売り手に支払われる譲渡額に含まれる可能性があるものと考えられる、と説明されています(出典:中小M&Aガイドライン(第3版)参考資料11「M&A仲介契約/FA契約 重要事項説明書サンプル」 p.7/中小企業庁)。
問題になるのは、追加の手数料と引き換えに、売り手の利益に反する便宜を図ることです。有料のサービスを利用すること自体が問題なのではありません。ただし、契約で定めた手数料であっても、その見返りに売り手の意向に反する優先紹介や不当な価格誘導が行われる場合は、ガイドラインで行ってはならないとされている行為に当たります。早く案件を紹介してほしい場合でも、こうした便宜の提案には応じないようにしましょう。
M&Aプラットフォームの掲載情報は確かめてから進める
M&Aプラットフォームは案件を簡単に掲載できる仕組みであるため、実在しない事業者の情報や、譲渡の意思がない事業者の情報が掲載される可能性もあります。また、掲載された情報が古く、現在は状況が変わっていることもあり得ます(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.131/中小企業庁、2024年8月30日公表)。
関心を伝える前後に、相手が実在するか、今も譲渡を検討しているかを確かめましょう。
当事者同士で進める場合も専門家の支援を受ける
自社から声をかけた場合や、プラットフォームでマッチングした場合は、その後の交渉や契約を原則として当事者が行います。ただし、M&Aに詳しくない当事者だけで進めるのは容易ではありません。
ガイドラインでも、当事者同士で手続きを進めることに不安を感じた場合は、弁護士や税理士などの専門家、または事業承継・引継ぎ支援センターなどの支援機関に相談することが望ましいとされています(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.43・59/中小企業庁、2024年8月30日公表)。
FAQ
条件に合う買収先がなかなか見つからない場合は、どうすればよいですか?
条件の優先順位を見直し、譲れない条件以外の幅を広げる方法や、探し方を組み合わせる方法があります。見つからない理由(条件が厳しい、希望する地域の案件が少ないなど)を依頼先に確認し、探す期間の目安もあわせて相談しましょう。
M&Aプラットフォームと、M&A専門業者への依頼は、どのように使い分ければよいですか?
M&Aプラットフォームは自社のペースで案件を探せる一方、マッチングの後の交渉や契約は原則として当事者が行います。料金はサービスごとに異なるため、利用前に確認が必要です。M&A専門業者は手数料がかかりますが、紹介から交渉・手続きまで支援を受けられます。社内にM&Aの経験があるか、どこまで支援が必要かで選び、両方を組み合わせることもできます(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.59/中小企業庁、2024年8月30日公表)。
気になる会社に、自社から直接声をかけてもよいですか?
声をかけること自体は可能ですが、相手が会社の譲渡を考えているとは限りません。これまでの関係を損なわないよう打診の仕方に配慮し、話が進む場合は秘密保持契約を結び、必要に応じて専門家の支援を受けましょう。M&A専門業者と契約している場合は、紹介を受けた相手と直接交渉することを制限する条項がないかも確認が必要です。詳しくは「アドバイザリー契約」で解説しています。
まとめ|買収の目的を軸に探し方を選び、売り手に信頼される準備をする
ソーシングは、買収の目的に合う候補先を探し、アプローチする活動です。マッチングは、売り手と買い手が当事者として接触することを指します。探し方には、M&A専門業者、M&Aプラットフォーム、金融機関や公的支援機関、自社からの打診の4つがあり、料金体系と支援の範囲を比べて、組み合わせて使うことができます。
マッチングを成功させるには、買収の目的と条件を具体的に伝え、紹介や打診には早く誠実に返答し、売り手が大切にしていることを理解することが大切です。買い手自身も調査される立場であることを踏まえ、資料と資金の準備を進めましょう。
まずは、買収の目的と条件を書き出し、相談先に買収ニーズを伝えることから始めましょう。相談先の選び方は「【買い手向け】M&Aの相談先」、M&A全体の進め方は「M&Aの流れ」で解説しています。



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