M&Aの表明保証とは?主な項目と違反した場合の責任

表明保証とは、M&Aの最終契約で、売り手などが、会社の財務・法務・労務などの一定の事項について、真実かつ正確であると約束することです。主な項目と違反時の対応、会社の実態を調べるデューデリジェンス(DD)との関係、契約前の確認点を解説します。
M&Aの表明保証とは
一定の事項が真実かつ正確であると約束すること
表明保証とは、売り手などが、会社の財務・法務・労務などの一定の事項について、一定の時点で真実かつ正確であることを表明し、保証することです。一般には、最終契約を結ぶ時点と、クロージング(株式や事業の引渡しと代金の支払い)の時点の両方を対象にします。
株式譲渡では、表明保証を行う売り手は対象会社の株主です。買い手も、契約を結び、履行する権限があることなどを表明保証します。(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.22・48〜49/中小企業庁/2024年8月30日公表)
英語のRepresentations and Warrantiesを略して、「レプワラ」と呼ばれることもあります。
M&A後に問題が見つかった場合のリスクを分担する
表明保証には、問題が後から分かった場合のリスクを、補償条項などと組み合わせて分担する役割があります。表明保証は事実についての約束、補償は契約に従って損害を補うことです。
例えば、労働紛争がないと表明保証したのに、実際には紛争があり、M&A後に和解した場合です。ガイドラインでは、売り手が和解金相当額を負担する例が示されています。(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.22/中小企業庁/2024年8月30日公表)
会社に問題があったというだけで、すべてが表明保証違反になるわけではありません。契約で保証した事項と、実際の会社の状況を照らし合わせて判断します。
表明保証の主な項目
売り手自身に関する事項
売り手は、契約を結び履行する権限を持つこと、この取引が法令や他の契約に違反しないこと、反社会的勢力との関係がないことなどを表明保証します。(出典:中小M&Aガイドライン(第3版)参考資料7「各種契約書等サンプル」 p.31〜32/中小企業庁/2025年12月15日時点版)
対象会社に関する事項
株式譲渡では、売り手が対象会社の状況についても表明保証します。主な項目の例は次のとおりです。
| 項目 | 表明保証する内容の例 |
|---|---|
| 会社と株式 |
|
| 決算書 | 決算書が財産・損益の状況を、重要な点で正しく示していること |
| 法令遵守 | 過去一定期間、法令を重要な点で守っており、行政処分を受けていないこと |
| 資産・知的財産権 | 必要な資産の利用権があり、他者の特許権などを侵害していないこと |
| 負債 |
|
| 重要な契約 | 重要な契約に違反がなく、COC条項などに基づく解除事由がないこと |
| 労働関係 | 賃金の未払い、労働紛争などがないこと |
| 税務・社保 | 税金や社会保険料などを適正に申告し、支払っていること |
| 情報開示 | 開示情報が重要な点で真実かつ正確であること |
| 反社会的勢力 | 会社や役員が反社会的勢力に該当せず、関係を持たないこと |
(出典:中小M&Aガイドライン(第3版)参考資料7「各種契約書等サンプル」 p.32〜36/中小企業庁/2025年12月15日時点版)
表のCOC条項は、株主の変更などを理由に、契約の相手方が契約を解除できることなどを定める条項です。表明保証の項目や範囲は、会社の事業やデューデリジェンスの結果を踏まえ、案件ごとに定めます。
買い手に関する事項
買い手が会社の場合は、適法に設立・存続していること、契約を結び履行する権限があること、必要な社内手続きを済ませていることなどを表明保証します。(出典:中小M&Aガイドライン(第3版)参考資料7「各種契約書等サンプル」 p.37/中小企業庁/2025年12月15日時点版)
M&Aの流れと表明保証の確認点

デューデリジェンスと表明保証の関係
デューデリジェンスは、会社の実態やリスクを調べる手続きです。表明保証は、その結果なども踏まえて最終契約で定める約束です。デューデリジェンスですべてのリスクが分かるとは限りませんが、表明保証があることを理由に省略できるわけでもありません。
デューデリジェンスは、売り手にとっても重要です。不十分だと、売り手が負う表明保証や補償の負担が重くなることもあるためです。
見つかったリスクは、譲渡価格への反映や補償条件の調整などで対応を検討します。(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.48・52〜53/中小企業庁/2024年8月30日公表)
契約前に売り手・買い手が確認すること
売り手は、決算書や契約書などと照らし合わせ、事実と違う内容を保証していないかを確認します。異なる点があれば、除外事項として契約書に明記するなど、扱いを買い手と合意しましょう。
契約案について、何を保証し、どこまで責任を負うのかを整理し、判断が難しい点は締結前に弁護士などへ確認を依頼しましょう。(出典:中小M&Aガイドライン(第3版)参考資料7「各種契約書等サンプル」 p.31・34/中小企業庁/2025年12月15日時点版)
経理や労務の担当者にも事実を確かめ、確認できていない事項をそのまま保証しないことが大切です。
買い手は、把握したリスクへの対応と補償の条件に加え、売り手の資力など、実際に補償を受けられる見込みを確認します。
表明保証に違反した場合はどうなるか
クロージング前に分かった場合
売り手の表明保証がクロージング日にも正確であることを、クロージングの前提条件として定めることがあります。この条件を満たさなければ、買い手がクロージングに応じない場合があります。軽微な誤りを除くかどうかも、契約によります。
相当な期間を定めて違反の是正を求めても解消されない場合に、契約を解除できるとする例があります。解除に代えて、協議のうえ契約の内容を変更できるとする例もあります。(出典:中小M&Aガイドライン(第3版)参考資料7「各種契約書等サンプル」 p.18・22・41/中小企業庁/2025年12月15日時点版)
クロージング後に分かった場合
表明保証に違反して相手に損害が生じた場合は、契約の補償条項に従って責任を負うことがあります。売り手の違反だけでなく、買い手の違反による補償もあります。
補償の範囲・上限・下限・請求期間は契約によって異なります。(出典:中小M&Aガイドライン(第3版)参考資料7「各種契約書等サンプル」 p.24・26/中小企業庁/2025年12月15日時点版)
FAQ
事業譲渡でも表明保証はありますか?
あります。中小M&Aガイドラインの事業譲渡契約書サンプルにも、売り手・買い手の表明保証と、違反した場合の補償が定められています。(出典:中小M&Aガイドライン(第3版)参考資料7「各種契約書等サンプル」 p.40・42/中小企業庁/2025年12月15日時点版)
譲渡する事業や資産に合わせて、保証する内容と責任の範囲を確認します。
まとめ|表明保証の内容と違反した場合の責任を確認する
表明保証では、何を、いつの時点で約束するのか、事実と合っているかを確認します。違反した場合の対応や補償の範囲は、契約によって異なります。
契約案と事実を照らし合わせ、不明な点や責任の範囲は契約前に弁護士などへ確認しましょう。



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