【売り手向け】M&Aのロングリストとは?記載項目・作成方法と注意点

ロングリストは、M&Aで自社の譲渡先となり得る買い手候補を幅広く挙げた一覧です。本記事では記載項目と作成方法、情報漏洩などの注意点を解説し、候補をショートリストへ絞り込むための準備を示します。
ロングリストとは
買い手候補を幅広く挙げる一覧
ロングリストとは、M&Aの買い手となり得る候補先について、事業内容や所在地などの基礎情報をまとめた一覧です。中小M&Aガイドラインでは、候補先は数十社程度となることが多いとされています(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.19/中小企業庁、2024年8月30日公表)。
目的は、有望な買い手を見落とさず、相手探しの土台を作ることです。主にM&A専門業者(M&A仲介・FA)が作成し、売り手は希望条件や避けたい相手を伝えて内容を確認します。
一覧に載っているだけでは、その相手が買収の意向を示しているとは限りません。候補として挙げた段階なのか、M&A専門業者が買収の希望を把握している相手なのかを確認しましょう。
ショートリストへの絞り込みにつなげる
ロングリストをもとに、最終的には具体的に検討する相手を選び、ショートリストへ絞り込みます。M&Aの流れの中では、買い手を探す段階で使う資料です。
ガイドラインでは、基本的には、会社が特定されないように概要をまとめたノンネームシート(ティーザー)で候補先に打診し、関心を示した先からショートリストへ絞るとされています。一方、情報が広がるのを抑えるため、打診前に候補を絞るケースも示されています(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.19〜20/中小企業庁、2024年8月30日公表)。
本記事では、このうち打診前に候補を絞る進め方を中心に、一覧作成までの準備を説明します。
ロングリストの記載項目
記載する項目に決まった様式はありません。一例として、次のような基礎情報をそろえると、候補先の事業や規模を把握しやすくなります。
| 項目 | 確認する内容の例 |
|---|---|
| 社名 | 正式な会社名。必要に応じて法人番号も確認 |
| 公式サイトURL | 事業や拠点などを確認できる情報源 |
| 所在地 | 本社所在地や主な事業拠点 |
| 主な事業 | 扱う商品・サービス、事業領域 |
| 会社の規模 | 確認できる売上高、従業員数など |
似た名前の会社や、同じグループの別会社を取り違えないようにしましょう。非公表の数値までそろえる必要はなく、確認できない欄を推測で埋めることも避けます。数値を見る際は、情報の出所と時点、会社単体かグループ全体かも確認すると、比較の前提をそろえられます。事業や拠点の変更が分かった場合は、現在の状況を確認し、その内容を踏まえて候補先を検討します。
ロングリストの作成方法
譲渡先に求める条件を整理する
まず、会社を譲渡した後も大切にしたいことを整理します。従業員の雇用、現在の地域での事業継続、取引先との関係、社名や拠点などが検討の例です。
希望をすべて同じ重さで並べると、候補を探す基準が曖昧になります。譲れない条件と、相手の提案によって相談できる条件を分けて伝えましょう。
例えば、拠点の維持を優先するか、移転先に従業員が通勤できれば相談するかによって、探す相手は変わります。これは条件を整理するための例であり、最初から譲歩するという意味ではありません。判断できない条件もそのままM&A専門業者に相談し、希望の理由やM&Aの目的も共有しましょう。
候補を探す範囲を決める
同業者だけでなく、関連事業を持つ異業種、地域外の企業、投資ファンドなどを含めるか相談します。自社の技術や人材、顧客基盤、拠点は、異業種の相手にも評価されることがあります。一方、範囲は広げるほどよいわけではありません。地域での事業継続を重視するか、設備や人材への投資を期待するかなど、希望条件に合わせて探す範囲を決めましょう。知名度や業種だけで狭めないことも大切です。具体的な相手の比較はショートリスト作成時に行います。
候補に含めたくない相手を伝える
M&Aを検討していることを知られたくない相手は、候補を集める前に伝えておきましょう。取引先、同業他社、地域で関係の深い企業など、具体的な社名を挙げると認識を共有しやすくなります。
ガイドラインでも、マッチングを希望する候補先や打診を避けたい先がある場合は、事前にM&A専門業者へ伝えることが望ましいとされています(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.44/中小企業庁、2024年8月30日公表)。
候補が減ることを気にしても、避けたい相手と、その理由・範囲は伝えましょう。特定の会社だけか、同業者全体か、関連会社も含めるかを明らかにします。社名だけで伝わりにくい場合は、普段使っている名称や把握しているグループ会社も添えます。一覧を受け取ったら、意向が反映されているか確認しましょう。
候補を集めて一覧にする
条件と探索範囲が決まったら、M&A専門業者がネットワーク、データベース、公表情報などから候補を集めます。把握している買収の希望や公開されている事業内容などを踏まえ、一覧に整理します。
売り手自身に心当たりがある場合は、その相手を候補に含めたいことと、どういう点で合いそうだと考えたかを伝えましょう。すでに支援を依頼している場合は、自ら接触する前に、窓口や情報の伝え方、アドバイザリー契約の内容も確認しておくとよいでしょう。
一覧を受け取ったら、社名だけでなく、事業内容や拠点などに認識違いがないかを確認します。
注意点
情報漏洩を防ぐ
ロングリストは、売り手とM&A専門業者が候補を検討するための資料です。候補先へそのまま送る資料として扱わず、誰が閲覧し、どのような方法で保管・共有するかを確認しましょう。
知人や取引先への問い合わせから、M&Aの検討を推測されることがあります。候補先の情報は公表資料で調べ、外部への確認が必要ならM&A専門業者と方法を相談しましょう。社内では、検討への関与が必要な人に共有範囲を限る方法があります。電子ファイルの閲覧権限や紙資料の保管・回収方法も確認しておくとよいでしょう。
候補を絞った後の打診でも、社名を伏せれば必ず秘密を守れるとは限りません。狭い業界や地域では、事業や拠点の特徴から会社が推測されることがあります。ノンネームシートの内容と伝える相手を合わせて検討することが大切です。
客観的な判断基準でリスト化する
候補を挙げる基準は、集め始める前にM&A専門業者と共有します。業種、地域、規模、事業上の組み合わせなどについて、自社の希望に照らしてどのような相手を候補に含めるのかを明らかにしましょう。
知らない会社が載っていても、すぐに外さず、基準にどう合うと考えたのかをM&A専門業者に聞きましょう。これは、選定理由を一覧の必須項目にするという意味ではありません。なぜ候補になるのかを説明してもらうことが大切です。
希望が十分に伝わっていなければ探索条件を見直し、どの相手を残すかはショートリスト作成時に検討します。
FAQ
ロングリストには何社くらい載せるのですか?
中小M&Aガイドラインでは、数十社程度となることが多いとされています(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.19/中小企業庁、2024年8月30日公表)。ただし、必要な社数や実際の打診先の数が決まっているわけではありません。業種、地域、会社の規模、候補から外したい相手などによって変わるため、数を増やすことよりも、自社の希望に沿った範囲から候補を集められているかを確認しましょう。
ロングリストについて、売り手は何を確認すればよいですか?
候補の事業内容や、候補に挙げた理由が自社の希望と合うかを確認します。希望する相手や、避けたい相手が一覧に反映されているかも見ましょう。売り手自身が一覧を作り直す必要はなく、分からない点や違和感をM&A専門業者へ伝え、説明を受けて整理することが大切です。その後、どの候補をショートリストに残すかを相談します。
まとめ
ロングリストは、買い手候補を幅広く挙げ、ショートリストへの絞り込みにつなぐ一覧です。売り手は譲渡先に求める条件と避けたい相手を伝え、候補の探索範囲や、一覧に入った根拠を確認しましょう。
まずは、譲れない条件と相談できる条件、候補に含めたくない社名を書き出してM&A専門業者と共有することから始めてください。情報の共有範囲にも気を配りながら、自社の希望に沿った候補一覧を整えることが、次の検討の準備になります。



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