企業概要書(IM)とは?記載内容と作成の流れ、ノンネームシートとの違いを解説

企業概要書(IM)とは?記載内容と作成の流れ、ノンネームシートとの違いを解説。秘密保持契約を結び、企業概要書を開示して、買い手が検討する流れを3つのアイコンで示した画像

企業概要書(IM)とは、秘密保持契約を結んだ買い手候補に、社名や事業・財務の詳しい情報を伝える資料です。本記事では、記載内容と作成の流れ、ノンネームシートとの違いを解説します。

企業概要書とは

企業概要書の意味と役割

企業概要書とは、秘密保持契約を結んだ買い手候補に対して、売り手が提示する、会社の具体的な情報をまとめた資料です。社名などの実名のほか、事業内容や財務状況などの情報が記載されます(出典:中小M&Aガイドライン(第3版)/中小企業庁、2024年8月30日公表)。

企業概要書は、「IM(インフォメーション・メモランダム)」や「IP(インフォメーション・パッケージ)」とも呼ばれます。どれも同じ資料を指しますが、本記事では「企業概要書」と呼びます。

企業概要書は、売り手から提供された情報をもとに、M&A専門業者(M&A仲介・FA)が作成することが多いとされています(出典:中小M&Aガイドライン(第3版)/中小企業庁、2024年8月30日公表)。売り手は、資料の提供や内容の確認を通じて作成に関わります。

買い手候補は、企業概要書を読んで、トップ面談に進むかどうかや、意向表明書を出すかどうかを判断します。企業概要書は、買い手候補が会社を本格的に検討するための土台となる資料です。

M&Aのどの段階で使われるのか

企業概要書は、M&Aの相手探しの段階で使われます。M&A全体の流れの中では、下図の6にあたります。全体の流れは「M&Aの流れとは」で解説しています。

M&Aのプロセスを示すイラスト

企業概要書の前後は、図の5〜8のように進みます(出典:中小M&Aガイドライン(第3版)/中小企業庁、2024年8月30日公表)。

  1. 候補先の選定と打診:M&A専門業者が、売り手の希望を踏まえて買い手候補を選び、社名を伏せた資料(ノンネームシート)で関心があるかを確かめる
  2. 秘密保持契約の締結と企業概要書の開示:関心を示した候補先のうち、売り手が開示に同意した相手と秘密保持契約を結び、社名を含む企業概要書を開示する
  3. トップ面談:企業概要書を読んでさらに関心を持った場合に、売り手と買い手候補の経営者同士が直接会う
  4. 意向表明と基本合意書の締結:買い手候補が意向表明書で買収価格の目安や主な条件を示し、合意できれば基本合意書を結ぶ

6のように、売り手の同意を得て、秘密保持契約を結んだ買い手候補に社名を明かすことをネームクリアといいます。ネームクリアにあわせて、企業概要書などの詳しい資料を開示します。

ノンネームシートとの違い

ノンネームシート(ティーザーとも呼ばれます)とは、会社が特定されないように、会社の概要を簡単にまとめた資料です。買い手候補に関心があるかどうかを打診するために使います(出典:中小M&Aガイドライン(第3版)/中小企業庁、2024年8月30日公表)。

ノンネームシートと企業概要書の違いは、次のとおりです。

項目 ノンネームシート 企業概要書
目的 関心があるかを打診する 検討を深めてもらう
社名 記載しない 記載する
情報の詳しさ 会社が特定されない範囲の簡単な要約 事業・財務などの具体的な情報
渡すタイミング 打診の初期段階 秘密保持契約を結んだ後

ノンネームシートで関心を集め、企業概要書で詳しく検討してもらうというように、情報を段階的に開示するために、2つの資料を使い分けます。ノンネームシートの記載内容や書き方は、「ノンネームシートとは?」で解説しています。

企業概要書に記載する主な内容

中小M&Aガイドラインでは、M&A専門業者の業務として、次のような事項を記載した企業概要書の作成・提供が挙げられています(出典:中小M&Aガイドライン(第3版)/中小企業庁、2024年8月30日公表)。

  • 事業内容、財務状況
  • 株主・役員構成、組織図、従業員構成
  • 商流、不動産
  • 技術・特許・許認可
  • 今後の事業の展望

ここでは、これらを6つのまとまりに分けて、記載する内容と、買い手が知りたいことを説明します。具体的な項目や構成は、案件によって異なります。

会社の基本情報と株主・役員構成

商号、所在地、設立年、沿革、資本金などの基本情報と、株主構成・役員構成を記載します。

買い手は、誰が株式を持ち、誰が経営に関わっているかを確かめます。株式譲渡では、株主から株式を譲り受けるため、株主が誰で、何株ずつ持っているかは重要な情報です。

事業内容と商流

製品・サービスの内容、主な顧客や仕入先、取引の流れ(商流)、業界での位置付けなどを記載します。

買い手は、どのように売上が生まれているかを確かめます。たとえば、売上の多くを特定の取引先に頼っていないか、仕入先との関係が安定しているかなどです。

組織と従業員

組織図や、正社員・業務委託の別、部署ごとの人数などの従業員構成を記載します。

買い手は、M&Aの後も事業を続けられる体制があるかを確かめます。経営者でなければ分からない業務や、特定の従業員に頼っている業務がある場合は、引継ぎの方法を考えるうえで重要な情報になります。

財務状況

過去数期分の売上・利益の推移、資産や借入金の状況などの財務状況を記載します。

買い手は、会社の収益力や財務の健全さを確かめます。財務状況は、会社の価値を考える材料にもなります。会社の価値の考え方は、「企業価値評価とは」で解説しています。

不動産・技術・許認可

所有または賃借している不動産、保有する技術・特許、事業に必要な許認可などを記載します。

買い手は、事業に欠かせない資産や資格を、M&Aの後も使い続けられるかを確かめます。たとえば、本社や工場の土地が経営者個人の所有である場合や、事業に許認可が必要な場合は、M&Aの後の扱いを確認する必要があります。

今後の事業の展望

事業計画、成長が見込める分野、今後取り組みたいことなどの事業の展望を記載します。あわせて、売り手が把握している課題も整理します。

買い手は、M&Aの後に事業をどう伸ばせるかを考えます。自社の事業と組み合わせることで生まれるシナジーを検討する材料にもなります。

なお、案件によっては、売り手の希望条件などが示される場合もあります。

企業概要書を作成・開示するまでの流れ

1. 資料の提供

売り手は、M&A専門業者に、企業概要書の作成に必要な資料を提供します。たとえば、次のような資料です。

  • 直近数期分の決算書と税務申告書
  • 登記事項証明書、定款、株主名簿
  • 組織図、従業員の一覧
  • 主な取引先との契約書、不動産の資料、許認可の資料

必要な資料は、会社の状況によって異なります。何を準備すればよいかは、M&A専門業者に確認しながら進めるとよいでしょう。

2. 経営者へのヒアリング

M&A専門業者は、資料だけでは分からない内容を、経営者から聞き取ります。たとえば、会社の沿革、強み、取引先との関係、今後の展望などです。

長年の経営で培った取引先との信頼関係や、従業員の技術力などは、決算書には表れません。会社の強みを最もよく知っているのは経営者です。ヒアリングでは、思い当たることを具体的に伝えましょう。

3. 内容の確認と修正

M&A専門業者が作成した企業概要書の案を、経営者が確認します。事実と違う点、書きすぎている点、書き漏れている点がないかを確かめ、必要に応じて修正を依頼します。

4. 秘密保持契約の締結と開示

企業概要書は、売り手が開示に同意した買い手候補と秘密保持契約を結んだうえで開示します。秘密保持契約とは、受け取った情報を外部に漏らさないことを約束する契約です。秘密保持契約の内容や結ぶタイミングは、「M&Aの秘密保持契約(NDA)とは?」で解説しています。

中小M&Aガイドラインでは、社名を明かして詳しい資料を開示する際には、売り手の同意を得て、候補先と秘密保持契約を結んだうえで行う必要があるとされています。売り手の同意は、原則として開示先の候補先ごとに個別に得ることが必要とされています(出典:中小M&Aガイドライン(第3版)/中小企業庁、2024年8月30日公表)。

また、打診してほしくない相手(取引先や同業他社など)がいる場合は、事前にM&A専門業者に伝えておくことが望ましいとされています(出典:同上)。

売り手が企業概要書を作るときの4つのポイント

1. 正確で客観的な情報を載せる

企業概要書には、事実に基づいた、正確で客観的な情報を載せることが大切です。

買い手は、企業概要書をもとに検討を進め、その後のデューデリジェンス(DD)で、財務・法務・税務などを詳しく調べます。企業概要書の内容が事実と違っていると、デューデリジェンスの段階で分かり、価格の見直しや、信頼関係の悪化につながることがあります。

数字は決算書などの資料と合っているか、表現が実態より大きく見せるものになっていないかを確認しましょう。

2. 課題や弱みも適切に伝える

企業概要書は、会社の良い面だけを伝える資料ではありません。課題や弱みも、意図的に伏せずに正確に伝えることが大切です。

すべての課題を企業概要書に細かく書くという意味ではありません。ただし、買い手の判断に重要な影響を与える事項は、M&A専門業者と相談しながら、内容に応じた適切な段階で伝えることが重要です。

たとえば、主要な取引先との取引が減る見込みがある、設備の更新が近いといった事項は、早めに伝えることで、対応策とあわせて説明できます。

課題を後から知った買い手は、ほかにも隠していることがあるのではないかと不安になります。M&Aのリスクと対策は、「【売り手向け】M&Aにおけるリスクとは」で解説しています。

3. 強みは具体的な事実で示す

会社の強みは、数字や具体的な事実で示すと、買い手に伝わりやすくなります。

たとえば、「取引先との関係が良好」と書くだけでなく、「主要取引先の多くと20年以上取引が続いている」のように書くと、買い手は状況を具体的に想像できます。数字は説明のための例です。技術力や人材、地域での評判なども、実績や資格、受注の事例などで示せると説得力が増します。

自社では当たり前と思っていることが、買い手にとっては大きな魅力になることもあります。ヒアリングの際に、M&A専門業者と一緒に整理するとよいでしょう。

4. 開示する相手と範囲を管理する

企業概要書には、社名や財務状況などの重要な情報が含まれます。誰に、どこまで開示したかを把握し、管理することが大切です。

具体的には、次のような点を確認します。

  • 開示する前に、候補先ごとに同意したか
  • 秘密保持契約を結んでいるか
  • どの候補先に、いつ、どの資料を開示したか

M&Aを検討していることが、従業員や取引先に意図しない形で伝わると、不安や混乱を招くおそれがあります。情報漏えいのリスクと対策は、「【売り手向け】M&Aにおけるリスクとは」で解説しています。

買い手が企業概要書で確認すること

買い手にとって企業概要書は、トップ面談に進むか、意向表明書を出すかを判断するための資料です。中小M&Aガイドラインでは、企業概要書に記載された情報などを踏まえて暫定的な希望条件を記載する書面を、第一次意向表明書と称することがあるとされています(出典:中小M&Aガイドライン(第3版)/中小企業庁、2024年8月30日公表)。

買収の目的に合っているか

まず、対象会社が、自社の買収の目的に合っているかを確認します。

事業内容、顧客、地域、人材などが、自社が買収で実現したいことに合っているかを見ます。たとえば、新しい地域への進出が目的であれば、対象会社の営業地域や顧客の分布を確かめます。自社の事業と組み合わせて、どのようなシナジーが見込めるかも検討します。

収益力や財務状況に気になる点がないか

次に、収益力や財務状況に、気になる点がないかを確認します。

売上・利益の推移、借入金の状況、特定の顧客への依存度などを見ます。たとえば、利益が特定の年だけ大きく増減している場合は、その理由を確かめます。分からない点は、質問としてまとめ、M&A専門業者を通じて売り手に確認します。

事業を引き継ぐうえで重要な点がないか

あわせて、M&Aの後に事業を引き継ぐうえで、重要な点がないかを確認します。

経営者への依存度、人材、許認可、不動産、主要な取引先、今後の課題などを見ます。たとえば、経営者個人の人脈で受注している場合は、M&Aの後も取引が続くかが重要になります。企業概要書で分かる範囲を確かめたうえで、トップ面談やデューデリジェンスで詳しく確認します。

なお、企業概要書には、公開されていない情報が多く含まれます。受け取った買い手は、秘密保持契約に従って情報を管理する必要があります。社内で共有する範囲や、検討を終えた後の扱いも、契約の内容を確認しておきましょう。

FAQ

企業概要書は売り手が自分で作る必要がありますか?

売り手が一人で作る必要はありません。企業概要書は、売り手から提供された情報をもとに、M&A専門業者(M&A仲介・FA)が作成することが多いとされています。売り手は、決算書などの資料を提供し、ヒアリングに応じ、できあがった内容に誤りがないかを確認します。会社の強みや課題を最もよく知っているのは経営者のため、内容の確認には十分な時間をかけることが大切です。

企業概要書とデューデリジェンスで提出する資料は何が違いますか?

目的と詳しさが違います。企業概要書は、買い手候補が検討を進めるかどうかを判断するために、会社の概要をまとめた資料です。デューデリジェンスは、契約の前に、買い手が対象会社の財務・法務・税務などを詳しく調べる手続きです。デューデリジェンスでは、契約書や帳簿などのより詳しい資料を提出し、企業概要書の内容が事実に合っているかも確かめられます。

企業概要書を渡した相手と交渉が進まなかった場合、資料はどうなりますか?

企業概要書を渡した相手と交渉が進まなかった場合の資料の取り扱いは、締結した秘密保持契約の内容に従います。返還や破棄などについて定められている場合は、その定めに従って対応します。企業概要書を開示する前に、秘密保持契約における情報の取り扱いについて確認しておきましょう。

まとめ|企業概要書は、買い手候補に会社を正しく知ってもらうための資料

企業概要書は、秘密保持契約を結んだ買い手候補に、社名や事業・財務などの具体的な情報を伝える資料です。社名を伏せたノンネームシートで関心を確かめた後に開示し、買い手候補はこれをもとにトップ面談や意向表明に進むかを判断します。正確な情報を載せることと、開示する相手と範囲を管理することが大切です。

売り手は、まず決算書などの資料を整理し、会社の強みと課題を書き出してみてください。何を準備し、誰にどこまで開示するかは、M&A専門業者と相談しながら決めるとよいでしょう。買い手は、買収の目的に照らして企業概要書を読み、気になる点を質問にまとめてトップ面談に臨みましょう。

M&A全体の流れは「M&Aの流れとは」、相談先の選び方は「【売り手向け】M&Aの相談先は?」、M&A仲介とFAの違いは「M&A仲介とFAの違いとは」で解説しています。

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