M&Aのマネジメントインタビューとは?目的・進め方と、売り手・買い手の注意点

M&Aのマネジメントインタビューとは、デューデリジェンスの中で、買い手や買い手が依頼した専門家が、対象会社の経営者などに直接質問する面談です。この記事では、トップ面談との違いや主な質問内容、一般的な進め方、売り手・買い手それぞれが注意したいポイントを解説します。
M&Aのマネジメントインタビューとは
デューデリジェンスの中での位置づけ
M&Aのデューデリジェンス(DD)とは、主に買い手が対象会社の事業や財務、法務などを調査し、リスクや課題を確認する手続きです。一般的には、基本合意書の締結後から最終契約の締結前に行われます。
デューデリジェンスでは、決算書や契約書などの資料を確認するほか、対象会社の経営者などと面談し、事実関係を確かめます。この面談をマネジメントインタビューといいます。

中小企業のM&Aでは、数年分の税務申告書の確認と経営者へのヒアリングなど、比較的限られた調査でデューデリジェンスを終える場合もあります。そのため、マネジメントインタビューは、規模の小さいM&Aでも重要な確認の機会となります。
(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.47/中小企業庁、2024年8月30日公表)
デューデリジェンス全体の目的や進め方は、「M&Aのデューデリジェンス(DD)とは?」で解説しています。
マネジメントインタビューの意味と目的
マネジメントインタビューは、実務上「マネイン」と略して呼ばれることもあります。
主な目的は、資料だけでは分からない事業の実態や数字の背景を確認することです。
例えば、決算書から売上高が減少していることは分かっても、その原因が一時的なものなのか、主要取引先との関係に変化が生じているのかまでは判断できないことがあります。
こうした点について経営者から直接説明を受けることで、事業の実態をより深く理解できます。また、経営者自身が十分に認識していない課題やリスクを発見する手がかりにもなります。
中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」でも、税務デューデリジェンスの調査手続きの例として、対象会社の経営陣や顧問税理士などへのインタビューが挙げられています。
(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.119/中小企業庁、2024年8月30日公表)
ただし、経営者へのヒアリングだけで、すべてのリスクを把握できるわけではありません。説明を受けた内容は、必要に応じて契約書や帳簿などの資料と照らし合わせて確認することが重要です。
(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.52/中小企業庁、2024年8月30日公表)
トップ面談との違い
マネジメントインタビューとトップ面談は、どちらも経営者が参加する面談ですが、目的が異なります。
| 項目 | トップ面談 | マネジメントインタビュー |
|---|---|---|
| 時期 | 一般的には基本合意書の締結前 | 一般的には基本合意書の締結後、デューデリジェンスの中 |
| 目的 | 相互理解と信頼関係の構築、交渉を進めるかの判断 | 対象会社の実態とリスクの確認 |
| 主な参加者 | 売り手・買い手双方の経営者、M&A専門業者(M&A仲介・FA)など | 対象会社の経営者・役員など、買い手、買い手が依頼した専門家 |
| 主に話す内容 | 経営理念、M&Aの背景、今後の考え方 | 事業、財務、税務、法務、人事労務などの具体的な事実 |
トップ面談では、経営者同士が考え方や経営方針を理解し、信頼関係を築くことが中心となります。
一方、マネジメントインタビューでは、事業や経営に関する具体的な事実を確認することが中心です。
なお、基本合意書を結ばずに進む場合もあります。面談の実施時期は、案件によって異なります。
トップ面談の目的や準備は、「M&Aのトップ面談とは?」で解説しています。
マネジメントインタビューの進め方
参加する人
マネジメントインタビューには、対象会社の経営者と買い手側の担当者・専門家などが参加します。
なお、従業員にM&Aを伝えていない段階では、参加者や面談の場所・時間に配慮が必要です。
売り手側
基本的には経営者が対応しますが、質問内容によっては、役員や経理担当者、顧問税理士などが参加することもあります。
例えば、過去の会計処理や税務申告について詳しい説明が必要な場合は、顧問税理士の協力を得ることで、より正確に回答できます。
中小M&Aガイドラインでも、顧問税理士が資料の提供や過去の会計・税務処理に関するインタビューなどに積極的に協力することが望ましいとされています。
(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.119/中小企業庁、2024年8月30日公表)
買い手側
買い手の経営者や担当者のほか、公認会計士、税理士、弁護士など、買い手が依頼した専門家が参加することがあります。
調査する分野によって、参加者や質問内容は異なります。
M&A専門業者
M&A専門業者は、日程の調整や参加者との連絡などを支援します。
調査そのものは、主に買い手が依頼した専門家が実施します。ただし、FA(フィナンシャル・アドバイザー)が財務や事業の調査、またはその支援を行う場合もあります。
一方、中小M&Aガイドラインでは、M&A仲介は自らデューデリジェンスを実施すべきではないとされています。
(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.73・95/中小企業庁、2024年8月30日公表)
主に聞かれること
マネジメントインタビューでは、事業の状況から財務、税務、法務、人事労務まで、幅広い分野について質問されます。
主な質問の例は、次のとおりです。
| 分野 | 主な質問の例 |
|---|---|
| 事業 |
|
| 財務 |
|
| 税務 |
|
| 法務 |
|
| 人事労務 |
|
| M&A後 |
|
これらは質問の一例であり、すべての案件で同じ内容が聞かれるわけではありません。
対象会社の事業内容や、事前の資料確認で見つかった疑問点によって、質問は変わります。
例えば、特定の取引先への売上依存度が高い会社では、その取引先との関係や取引継続の見通しが重要な確認事項となります。
また、株式譲渡では、株主の変更によって重要な契約の解除などが生じないかを確認する場合があります。
(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.22/中小企業庁、2024年8月30日公表)
デューデリジェンスで確認される主なリスクは、「M&Aのデューデリジェンス(DD)とは?」で解説しています。
一般的な流れ
マネジメントインタビューの進め方は案件によって異なりますが、一般的には次のような流れで進みます。
1. 事前に質問リストを確認する
買い手側が開示資料を確認したうえで、質問リストを作成し、事前に売り手へ共有する場合があります。
質問リストが共有された場合は、内容を確認し、誰が回答するかを整理します。
2. 回答を準備する
質問に対する回答を準備します。
売上や利益などの数字については、決算書や帳簿などの資料で確認しておきます。経営者だけでは答えにくい事項については、担当者や顧問税理士に確認します。
3. 当日、質問に答える
買い手側の担当者や専門家からの質問に回答します。
事前の質問リストにない内容を聞かれることもあります。
分からないことをその場で推測して答える必要はありません。確認が必要な事項は、その旨を伝えます。
4. 追加の質問に回答する
面談中に回答できなかった事項や、追加で確認が必要になった事項について、後日、資料や書面で回答します。
マネジメントインタビューは、1回で終わるとは限りません。調査の進み具合によっては、追加の面談が行われることもあります。
また、質問と回答は、誰が、いつ、どのような内容を回答したのかが分かる形で記録することが大切です。
質問と回答を一覧にした「Q&Aシート」などを用いて管理する場合もあります。
売り手が気をつけたい4つのポイント
1. 質問に的確に答えられるよう、資料と回答を準備する
事前に開示した決算書や事業計画などを見直し、数字の根拠や変動した理由、計画の前提を説明できるようにしておきます。質問リストが共有されている場合は、回答に必要な資料も確認しておきましょう。
当日は、質問の意味や、どこまでの説明を求められているかが分からなければ、質問者に確認します。意図を推測したまま答えると、説明がかみ合わないことがあります。
また、分からないことは推測で答えず、確認してから回答することが大切です。その場で答えられない場合は、確認が必要な旨を伝え、担当者や顧問税理士などに確認したうえで後日回答しましょう。
2. 事実や数字を偽ったり、誇張したりしない
自社を良く見せようとして、実績を大きく伝えたり、不確かな見込みを確定した事実のように説明したりしないことが大切です。
確認できた事実と、今後の見通しや自分の考えを分けて伝えることを心がけましょう。資料と異なる説明をしたことに気づいた場合は、そのままにせず、正しい内容に訂正します。
3. 課題やリスクは、対応状況とあわせて説明する
自社にとって不利な内容でも、重要な課題やリスクを隠さず、事実に基づいて説明することが大切です。
例えば、主要な従業員が退職する懸念や、取引先とのトラブルがある場合は、現在分かっている状況と、どのように対応しているかを伝えます。
まだ対応できていない事項は、その旨と今後の対応方針を説明しましょう。課題がないように取り繕うよりも、現状を正確に理解してもらうことを重視します。
口頭での説明は、相手に正確に伝わらないことがあります(出典:中小M&Aガイドライン(第3版)参考資料7「各種契約書等サンプル」 p.24〜25/中小企業庁、2025年12月15日時点版)。重要な事項は、口頭だけでなく書面でも伝え、記録に残しておきましょう。
ただし、書面で伝えたからといって、表明保証に関する責任が当然に免除されるわけではありません。どう扱われるかは、最終契約の定めによって異なります。
4. 厳しい質問にも、落ち着いて丁寧に対応する
厳しい質問を受けても、自社への批判だと決めつけず、相手が何を確かめたいのかを落ち着いて確認しましょう。
意見が異なる場合も、相手の説明を聞いたうえで、事実と自分の考えを分けて伝えます。反論に終始したり、高圧的な態度を取ったりせず、質問に沿って説明することを心がけましょう。
買い手が気をつけたい4つのポイント
1. 開示資料を確認し、質問の目的と優先順位を整理する
事前に開示された決算書や契約書、企業概要書(IM)などを確認し、資料だけでは分からなかった点や、追加で確かめたい点を整理します。
質問では、何を確認したいのかを明確にし、具体的な事実を尋ねることが大切です。例えば、売上が減少した背景を知りたい場合は、変化が生じた時期や取引先、その原因について聞きます。経営者の考え方や今後の見通しも、その判断の背景や前提とあわせて確認しましょう。
資料やそれまでの回答ですでに分かっていることを繰り返し聞くと、相手の負担が大きくなります。買い手側の担当者や専門家の間で質問を共有し、優先順位を決めておきましょう。ただし、資料と説明に食い違いがある場合や、重要な事項を別の角度から確かめたい場合は、追加で確認する必要があります。
中小M&Aガイドラインでも、M&A仲介が買い手に対し、売り手に過大な負担が生じないよう、デューデリジェンスの調査対象を適切な範囲とするよう働き掛けることが望ましいとされています。
(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.95/中小企業庁、2024年8月30日公表)
2. 相手が回答しやすい聞き方と環境を整える
相手の説明を途中で遮ったり、説明を聞く前から疑うような態度を取ったりすると、回答しにくい雰囲気になります。質問の背景や確認したい点を伝え、相手の説明を落ち着いて聞きましょう。
抽象的な質問で意図が伝わりにくい場合は、具体例を添えて説明します。相手への配慮は必要ですが、重要な課題やリスクについての確認を遠慮して省く必要はありません。
同席する担当者や専門家の役割、質問する分野、面談の進め方は、事前に調整しておきます。必要な専門家が参加できるようにしながら、同じ内容を何度も説明してもらう負担を抑えましょう。
録音する場合は、事前に目的を説明し、相手の了承を得ておくことが大切です。録音は必須ではなく、議事メモやQ&Aシートなど、記録の方法もあわせて決めておきましょう。
3. 聞いた内容を資料や追加確認で裏付ける
経営者から直接説明を受けることは、対象会社を理解するうえで重要です。
しかし、経営者自身が認識していないリスクが存在する可能性もあります。
中小M&Aガイドラインでも、経営者へのヒアリングだけでリスクを評価することには限界があるとされています。
(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.52/中小企業庁、2024年8月30日公表)
例えば、経営者から「取引先との関係に問題はない」と説明を受けた場合でも、必要に応じて契約書の内容や取引実績を確認します。
インタビューで得た情報を、客観的な資料と照らし合わせて確認することが大切です。説明と資料に食い違いがある場合や、回答が曖昧な場合は、追加の質問や資料の提出を通じて確認しましょう。
そのうえで、価格や契約条件への影響は、根拠と対応案を整理して話し合いましょう。条件交渉の進め方は、「M&Aの条件交渉とは?」で解説しています。
4. 確認事項を記録し、最終契約やPMIに引き継ぐ
マネジメントインタビューで確認した事項は、面談が終わった後も重要な情報となります。
例えば、面談中に説明された課題について、後日追加の質問を行った場合は、その回答も含めて記録しておきます。
誰が、いつ、何を質問し、どのような回答があったかを確認できる状態にしておくことが大切です。
重要な確認事項は、最終契約の内容を検討する際や、M&A成立後のPMI(買収後の経営統合)の準備にも役立ちます。
中小PMIガイドラインでも、デューデリジェンスの調査報告書や売り手へのQ&Aシートなどを、PMIの担当者や支援機関に引き継げるよう適切に保管・管理することが望ましいとされています。
(出典:中小PMIガイドライン p.36/中小企業庁、2022年3月)
FAQ
マネジメントインタビューは、なぜ行うのですか?
決算書や契約書などの資料だけでは分からない、事業の実態や数字の背景、経営者自身も認識していないリスクの手がかりを確認するためです。ただし、経営者へのヒアリングだけでリスクを評価することには限界があるため、資料による確認と組み合わせて行います。
マネジメントインタビューには、従業員も参加しますか?
基本的には経営者や役員が対象ですが、必要に応じて経理などの担当者や顧問税理士が参加することもあります。社内にM&Aを伝えていない段階では、参加者を必要な範囲に限り、面談の場所や時間を工夫して進めます。
売り手は、マネジメントインタビューの前に何を準備すればよいですか?
事前に質問リストが共有された場合は、その内容に沿って回答を準備します。数字については決算書などの資料で確認し、財務・税務の質問に備えて顧問税理士に協力を頼んでおくとよいでしょう。また、同席する人や面談の場所・時間について、M&A専門業者と事前に相談しておくことも大切です。
マネジメントインタビューで、会社にとって不利なことを聞かれたら、どう答えればよいですか?
質問された事項について、事実に基づいて誠実に回答することが重要です。分からないことは推測で答えず、確認してから回答しましょう。
課題がある場合は、その状況と対応の考え方もあわせて説明します。また、重要な事項は口頭だけでなく書面でも伝え、記録に残しておくことが大切です。
まとめ|マネジメントインタビューは、資料だけでは分からない実態を確かめる面談
マネジメントインタビューは、デューデリジェンスの中で、買い手や専門家が対象会社の経営者などに直接質問し、対象会社の実態やリスクを確認する面談です。一般的には基本合意書の締結後、最終契約の締結前に行われ、経営者同士の相互理解を目的とするトップ面談とは役割が異なります。
売り手は、事実や数字を正確に伝え、課題やリスクは対応状況とあわせて説明しましょう。資料をもとに回答を準備し、質問の意図が分からないときや、その場で答えられないときは確認することが大切です。相手を尊重し、落ち着いて対応しましょう。
買い手は、資料を確認して質問の目的や優先順位を整理し、相手が回答しやすい聞き方と環境を整えましょう。聞いた内容は資料や追加の確認で裏付け、質問と回答の記録を最終契約の検討やPMIの準備に引き継ぐことが大切です。
デューデリジェンス全体の流れは「M&Aのデューデリジェンス(DD)とは?」、調査結果を踏まえた契約は「M&Aの最終契約とは?」で解説しています。



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