M&Aの企業価値算定費用の相場は?依頼先で変わる費用と「無料」の評価の注意点

M&Aの企業価値算定の費用は、当社の支援経験では、簡易評価は無料の場合のほか10万〜30万円程度かかることもあり、公認会計士に正式な評価報告書を依頼する場合は50万〜200万円程度が一つの目安です。この記事では、費用が変わる要因と依頼先ごとの違い、「無料」の評価で確認したい点を解説します。
M&Aの企業価値算定とは
企業価値算定とは、M&Aなどで会社や事業の価値を金額で評価することです。企業価値評価(バリュエーション)とも呼ばれます。評価額は譲渡価格を決める目安の一つで、そのまま譲渡価格になるわけではありません(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.22/中小企業庁、2024年8月30日公表)。
企業価値評価の費用は、通常、依頼した人が負担します。売り手が依頼するほか、買い手もデューデリジェンスの結果などを踏まえて買収価格を検討するために、公認会計士や税理士に依頼することがあります。
企業価値算定の費用が変わる3つの要因
1. 評価の目的と深さ
企業価値評価には、大きく分けて簡易評価と、評価報告書(株価算定書)の作成があります。
簡易評価は、M&Aを検討するかどうかの判断や、提案の段階での目安として、決算書などをもとに概算するものです。評価報告書は、前提条件・評価の方法・計算の根拠を書面にまとめるもので、その分作業量が多くなります。組織再編や紛争の解決など、評価額の根拠を詳しく確認したい場合や、第三者に説明する必要がある場合に作成します。
使う評価の方法によっても作業量は変わります。例えばDCF法は、事業計画をもとに将来の数字を予測するため、手間がかかります。目的に合わない詳しい評価に費用をかけないよう、まず何のための評価かを決めておきましょう。
2. 依頼先
依頼先には、M&A専門業者(M&A仲介・FA)のほか、公認会計士や顧問税理士があります。依頼先によって、評価の内容と費用の扱いが変わります。
| 依頼先 | 主な評価の内容 | 費用の扱い |
|---|---|---|
| M&A仲介 | 売り手・買い手双方の間に立ち、参考資料として簡易的な評価額を示す | 簡易評価について別途料金を請求しない業者もある |
| FA(フィナンシャル・アドバイザー) | 依頼者の立場で評価する | 業務範囲に含まれるか、別の費用かは契約による |
| 公認会計士 | 評価報告書の作成を含む詳しい評価。セカンド・オピニオンの依頼先にもなる | 業務範囲に応じて個別に見積もる |
| 顧問税理士 | 決算書や税務の情報をもとにした試算、時価純資産の確認など | 顧問業務の範囲外なら、事前に報酬の了承が必要 |
中小M&Aガイドラインでは、売り手・買い手の双方から依頼を受けるM&A仲介は、確定的な評価を行わないこととされています。どの依頼先でも、評価の方法や前提条件の説明を受け、納得してから進めることが大切です(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.92〜93・116/中小企業庁、2024年8月30日公表)。
3. 会社の規模と資料の整い方
子会社の有無、事業の数、不動産などの資産の多さによって、確認する範囲と作業量が変わります。
そのうえで、決算書・税務申告書(3期分程度)、資産・負債の明細、事業計画などが早くそろうと、資料の不足による追加の作業を減らしやすくなります。
「無料」の企業価値算定の注意点
無料の評価は、主に相談や提案の段階で行う簡易評価です。簡易評価について別途料金を請求しないM&A専門業者もあります。
無料の評価を受けるときは、次の点を確認しましょう。
- 評価の前提を確認する:どの方法・資料・前提条件で評価したかを確かめます。M&A仲介が示す簡易評価は、確定的な評価ではなく参考の目安です。正常利益の調整の仕方など、前提によって評価額は大きく変わります。
- 評価額の高さで依頼先を選ばない:中小M&Aガイドラインでは、譲渡額の水準について過大な評価を示す広告・営業は、行ってはならないとされています。
- 手数料の総額も確認する:無料の評価だけで判断せず、着手金や成功報酬など、M&A支援全体の手数料も確認します。
(出典:中小M&Aガイドライン(第3版) p.85・93/中小企業庁、2024年8月30日公表)
FAQ
企業価値算定の費用の相場はいくらですか?
評価の目的と深さ、依頼先、会社の規模によって変わります。当社の支援経験では、決算書などをもとに概算する簡易評価は、無料で提供される場合があるほか、10万〜30万円程度の費用がかかるケースもあります。組織再編や紛争の解決などのために公認会計士へ正式な評価報告書を依頼する場合は、50万〜200万円程度が一つの目安です。評価報告書は、M&Aの検討や交渉の目安にする簡易評価とは目的が異なり、評価の根拠まで書面にまとめるため、費用が高くなります。M&Aの検討初期であれば、まずは簡易評価を参考にし、必要に応じて詳しい評価を依頼する方法もあります。依頼する前に見積もりを取り、費用に何が含まれるかを確認しましょう。
企業価値算定の費用は、補助金の対象になりますか?
事業承継・M&A補助金の専門家活用枠では、企業価値や株式価値などの価値算定にかかる費用が、補助対象経費に挙げられています。FAやM&A仲介に支払う費用は、M&A支援機関登録制度に登録された業者のものに限られます。また、交付決定日以降に契約・発注し、補助事業期間内に支払った経費が対象です。公募回によって条件が変わることがあるため、依頼する前に最新の公募要領を確認しましょう(出典:専門家活用枠(買い手支援類型・売り手支援類型)公募要領(16次公募) p.18・63/事業承継・M&A補助金事務局、2026年9月)。
まとめ|評価の目的を決めてから、依頼先と費用を確認する
企業価値算定の費用は、評価の目的と深さ、依頼先、会社の規模と資料の整い方によって変わります。無料の簡易評価は目安として活用し、前提条件と手数料の総額もあわせて確認しましょう。
まずは決算書などの資料をそろえ、M&A専門業者に簡易評価を依頼し、手数料の説明も受けましょう。詳しい評価が必要な場合は、目的を伝えて公認会計士などに見積もりを依頼します。
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